UPDATE: 2021/02/02

変化する実店舗の価値とオンラインプラットフォームが広げる選択肢。イノベーティブなまちづくりへの一歩とは

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 Peatix Japan株式会社(以下、Peatix)が主催する「Yokohama Local×Tech」シリーズ、第2回目のオンラインイベントが11月12日(木)に実施された。

 トークテーマは、「ローカルビジネスのマッチングプラットフォームを活用した商店街店舗のイノベーション」。進行は前回同様にPeatix の畑氏が務めた。

 登壇したのは、「体験」のマッチングプラットフォームを提供する株式会社Zehitomo CRO(最高収益責任者)の下村氏と、合名会社川本屋商店 副社長の川井氏、そして有限会社梅や 専務取締役の山下氏。川井氏はNPO法人HamaBridge濱橋会副理事長、山下氏は一般社団法人横浜青年会議所の常任理事をそれぞれ務め、まちづくりにも意欲的に取り組んでいる。

 本記事で当日のディスカッションの内容をお伝えする。


イベントページ:https://y-localtech2.peatix.com/

プロフィール:
下村 亮介 氏
株式会社Zehitomo(以下、Zehitomo) CRO(最高収益責任者)
神奈川大学にて経営工学を専攻。在学中にWeb・動画制作と新卒採用支援会社を起業し、譲渡した経験を持つ。卒業後、2009年に株式会社キーエンスに入社。製造業向けのコンサルティング営業に従事した後、事業推進部へ異動。マーケティング担当として新商品プロモーションとCRMを目的とした幅広いマーケティング事業に携わる。2013年、株式会社ビズリーチにマーケティング担当として入社。B2Bマーケティングと営業戦略、セールス事業部の基盤作りに従事。セールス事業部を10名の組織から300名へ拡大した。2016年にはテレビCMプロジェクトにて責任者としてマーケティング戦略とインサイドセールス組織の立ち上げを行い、組織規模も8名から70名規模まで拡大した。2020年、ZehitomoのSenior VP of Salesとして参画後、現在のポジションへ昇格。

川井 喜和 氏
合名会社川本屋商店(以下、川本屋商店) 副社長 5代目次男
NPO法人HamaBridge濱橋会副理事長 1984年横浜生まれ。大学時代からまちづくりに興味をもち、ライフワークに。好きな言葉「猪突猛進」。

山下 大輔 氏
有限会社梅や(以下、梅や) 専務取締役
1981年横浜生まれ。青山学院大学を卒業後、宮崎県で養鶏を学び家業である鶏肉専門店梅やに入社。創業100余年の老舗の世代交代を行いながら、まちづくりに従事。現在は一般社団法人横浜青年会議所(以下、JC)で常任理事を務める。

EC展開におけるこれまでの課題とコロナ禍で起きた変化

畑さん(以下、畑):
川井さんのお店は売り上げの90%がECということで、驚異的ですね。元々、ECをやり始めたきっかけを教えていただけますか。

川井さん(以下、川井):
約15年前、店の4代目である母が楽天を見つけ、これを試したいと言ったことから始まりました。母は、当時なかなか物が売れなくなってきたことに危機感をもって、新たな事業展開を考えたのだと思います。

山下さん(以下、山下):
私の場合、店舗に行けば300円で買える鶏肉を、送料がかかるECで買う価値を見出せないと思い、ずっとEC販売は躊躇していました。そんな中で、お歳暮やギフト用に鍋のセット等を大切な人に送りたい、というお客さんの意見をもらいました。その商品だけでもネットで販売しよう、と思ったことがECサイトを作ったきっかけです。

畑:
すごく苦労されてECをやっているのだろうなと思うのですが、これまで乗り越えてきた課題やこれから解決していくべき課題について伺えますか。


Peatix 畑氏

川井:
川本屋商店は楽天のレビューで5段階評価のところ現在4.85と、高評価をいただいています。理由としては、ECというお客様の顔が見えない形の中でも、返品交換の受付や手書きの手紙の送付など、出来る限りきめ細やかな対応をしているためだと考えています。ただ単に受注して梱包して出荷する、というだけではないECに努力して取り組んでいます。

畑:単純に商品を送ればよいという話ではなくて、商品に込めた想いをちゃんとお客さんに伝えていかないといけないですよね。
山下さんの店舗では生鮮品を取り扱っているためECでの販売はなかなか難しい所があると思いますが、いかがでしょうか。

山下:
鶏肉は3、4日が消費期限なので、生の鶏肉を宅急便で送ると、到着後早くて次の日には消費期限が来てしまいます。そのため、生鮮品や冷蔵品として送ることはできないと判断して、これまでは冷凍品だけに特化してやっていました。
ただ、コロナ禍になって、店頭販売の方は例年以上に売り上げが伸びました。もっとプロモーションしたいと思いましたが、人が集まってクラスターを発生させてはいけないし、かといって売り上げはあげないといけないし、と悩んだときに、宅急便でご自宅に届けるといいのでは、という発想になりました。そこから、ECを焼き鳥一本、もも肉一枚から冷蔵で買えるように切り替えました。


梅や 山下氏

「体験」のマッチングプラットフォームビジネスから考える、
実店舗が提供する本質的価値とオンラインならではの可能性

畑:
実店舗だからこそ出来ること、というのはあるのでしょうか。

川井:
リアルタイムで「お勧めはこれですが、どういうお好みですか」というようなコミュニケーションをしながら選ぶことができることは実店舗ならではだと思っていますね。渋いお茶が好きですか、甘いお茶が好きですか、普段使いですか、ギフトですか・・・など、細かな要望を聞くことはオンラインではなかなかできないと思います。


川本屋商店 川井氏

山下:
店舗には、「これを買う」と決めて来る方も沢山いらっしゃいますが、お店に来てから悩む方も多いです。その時にやはり「何を作る予定ですか?」「それだったらこの部位がいいです」「じゃあこういう風にカットしましょうか」といったコミュニケーションを通じたサービスができますね。

畑:
あとは例えば、鴨肉などはなかなか手を出せないし、それを求めて買いに来ることは珍しいと思いますが、お店のお勧めや、「こんな形にするとおいしく食べられますよ」という提案があると、買いやすいと思います。そういった体験の提供が店舗では大切ですね。

Zehitomoは体験のマッチングプラットフォームをご提供されていると思いますが、実際にZehitomoで体験を提供している商店街の店舗は多いのでしょうか。

下村:
まだ少ない数ですが、このコロナ禍の状況も相まって、増えてきています。実店舗に来ていただくきっかけとして導入する店舗もあります。例えば、ある和菓子屋さんは、和菓子を作る体験をサービスとして提供することで、和菓子作りを通じて商品を買って貰うことに取り組んでいます。
実際に店舗に行くタイプのサービスもありますし、先に食材をお送りしてお互い手元に用意して、オンラインで作り方をレクチャーする、という形もあります。その形だと距離の概念もないので、全国区のお客様に対して提供ができますね。


Zehitomo 下村氏

畑:
そうすると結構可能性は広がりますね。今まで実店舗でしかできなかったことをオンライン化することはなかなか難しいかと思っていましたが、入口や提供する環境は逆にオンラインの方が広がりはあるかもしれませんね。

山下:
鴨肉などを自宅で食べない理由に、自分でどうやって調理すればいいのかが分からないため、ということがあります。ただ、作ってみたら絶対に美味しくできるし、意外に安い値段で食べられる。そのきっかけを与えるために、一対一で、オンラインでアドバイスをしながら作ってもらうこともできるのかな、と今まで持っていなかった想像が浮かびました。

畑:
元々、実店舗に行く理由は商品を買いに行くことだったと思いますが、それが実店舗でなくても良くなってきた。実店舗で提供するサービスというのは、もしかしたら商品そのものではなくなってきているのかもしれないですね。

商店街が抱えるIT化の壁。「様子見」の人たちをどう動かすか

畑:
店舗経営者が高齢化している商店街では、ITサービスの導入がなかなか進まないこともあると思うのですが、下村さん、いかがでしょうか。

下村:
そういった難しさを感じていらっしゃるお客様は多いですね。Zehitomoの場合、サポートチームが電話やzoomで使い方からお伝えすることもあります。

畑:
お客さんとお話される印象では、思ったよりも簡単に出来るな、となるのか、それとも難しいな、となるのか。どちらなのでしょうか。

下村:
思ったより簡単だとおっしゃっていただける方が多いかとは思っています。
Zehitomoでは、私たちが代わりに集客をして、お店側には本当に必要なお客様に向けたメッセージを送っていただくだけ、というコンセプトなので、導入の敷居をさげて、手軽さを提供することはできていると思います。

畑:
やはり思ったより簡単にできる感じはありますよね。とはいえ、年齢が上がるとなかなか抵抗もあるのかなと思いますが、川井さん、山下さんの商店街ではいかがでしょうか。

川井:
まさに今、国の「Go To商店街」事業を利用して伊勢佐木町全体で楽天に出店しようという話になっていますが、そこで課題に直面しています。
まず、変わりたいと思えるかどうかが重要だと感じています。その気持ちがない所を動かすことは非常に難しいです。皆、最初は様子見。その様子見の人たちを引っ張っていくためには、小さな成功体験を築き上げてあげることが重要かと思っています。

山下:
お年寄りの方には、「インターネット」という言葉を聞くだけで拒否反応がある方もいらっしゃると思いますが、いざその世界に入って慣れてしまえば確実に便利で使いこなせる。年齢は関係ないと思っています。今はプラットフォームが色々出来上がっているので、そこに乗ってしまえば、簡単に新規顧客を獲得できると思います。

梅やでも去年からcookpad martというサービスを使っていますが、導入をした当初は、「面倒くさい、そんなもの誰もできない」と言われました。でも、今となっては当たり前のようにやっています。そういう風に慣れるものなので、成功体験を皆に与えることでそれが当たり前のようになっていく、という風に持っていかないといけないと思います。

次世代のまちづくりに必要不可欠な商店街と企業の連携

畑:
「商店街とネットワークを作るときのポイント、一般企業がまちづくりに参画するときのポイントは」という質問がきています。
そもそも、商店街と一般企業が一緒に何かやろう、という動きはあるものなのでしょうか。

川井:
もうJCではそういう形で改革をやっていますし、私でいうと濱橋会というNPOをやっています。濱橋会では運河を通じたまちづくりをやっていますが、伊勢佐木町、元町、中華街、関内、色んな所の現場のリーダーたちが集まっています。

まちづくりをやりたいと言っても、今すぐに実現できるわけではなく、形になるのは少し先になってくると思います。その次世代を担っていく人たちが、どこに集まっているか。それはもしかしたらYOXO BOXかもしれないし、JCかもしれないし、濱橋会かもしれない。そういうコミュニティと早めにコンタクトをとって、意志ある人たちが繋がれば、連携は自ずと進んでいくことだと思います。逆に私たちも、応援して下さる、一緒にやりたいという企業さんを探している。そこのマッチングはこれから非常に重要になってくると考えます。

畑:
先程の打合せでお話を聞きましたが、前回の「Yokohama Local×Tech」のイベントに登壇された方々が皆さんともその後継続的につながってらっしゃるそうですね。

川井:
そうですね、一回目はもう商談が成立していると聞いています。

畑:
そういう風に、イノベーティブな人たちがまずは個人個人で推進していくということで改革が進んでいくということしょうか。

川井:
まずはそこなのかなと。商店街の店舗同士はつながっているので、後は一気に話が広がります。

畑:
Zehitomoを使おうとする方もイノベーティブな方が多いのでしょうか。

下村:
多いと思います。積極的に変わろうとしていらっしゃいますし、そういう新しい取り組みをして、今の事業を変えていくことを非常に積極的にやられている方々が多いです。Zehitomoを使いこなしてドラスティックに事業を変えていらっしゃる方も非常に多いと思いますね。

畑:
この間、私自身がZehitomoを使ってエアコンの設置を頼みましたが、エアコンをつけに来てくれた人は、メッセージの返信を含めて全部自分でやっているようでした。普通、エアコンの取り付けと営業は担当が分かれているものだと思いますが、その人自身がお客さんと接することが好きで、そのようにされていたようです。そういう風に、何でもやってみようというマインドを持っている方は新しいことに挑戦もできますし、そういう方々が集まるとさらに色んなことができそうですね。

ディスカッション中、「まちづくりに取り組む商店街の人達は色んな人と会いたがっているし、意見を求めている。一度会って話せば無限の可能性があると思う」と、川井氏は話していた。その言葉通り、今後の商店街のイノベーションの可能性を感じさせるディスカッションとなったのではないだろうか。

今回のイベントで出来た繋がりから、今後更なるイノベーションの動きが横浜に広がることを期待する。

アーカイブ動画:https://youtu.be/ZtnDFRkmw0w
Zahitomo:https://www.zehitomo.com/
川本屋茶舗:http://www.kawamotoya.com/
梅や:http://www.umeya-torinikuten.co.jp/

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