UPDATE: 2019/11/07

eスポーツ市場で成功させるための秘訣とは

横浜ガジェットまつりで開催したパネルディスカッション

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 10月17日、横浜ガジェットまつり2019のイベントの1つとして開催された「第27回横浜ITクラスター交流会」が、京セラみなとみらいリサーチセンターにて行なわれた。

 横浜ITクラスター交流会とは、横浜経済の発展を目的に新横浜地区で活動を行なってきた「新横浜ITクラスター交流会」を発展的に解消し、2013年に民間有志が横浜市経済局や横浜企業経営支援財団と連携し設立した任意団体。年4回の交流会の企画運営を起こっており、新横浜時代から数えると16年間で67回にも上る。

↑「横浜ITクラスター交流会」の吉川淳一郎委員長

 今回のテーマは「先端技術・デバイスが変えるeスポーツの未来」と題したパネルディスカッションで、モデレーターは当編集部のガチ鈴木が務めている。ラグビーワールドカップの興奮がまだ冷めやらないが、来年はオリンピックも控えており、スポーツ熱が盛り上がっていくだろう。

 そんななか、新たなスポーツとして注目されているのが「eスポーツ」だ。海外ではすでに大規模なeスポーツ市場が確立されており、国際大会では数億円規模の賞金が用意されている。その波がようやく日本にも波及しはじめており、今年の第74回国民体育大会“いきいき茨城ゆめ国体”の文化プログラムとして「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」が開催。これからますます普及することが予想され、どんどん大きなビジネスになってプレイヤーが増えていけば、パラダイムシフトが起きると考えられている。

■eスポーツの市場感と世界の動向
↑ デロイト トーマツ グループにおいてeスポーツに関する市場分析やコンサルティングを手掛ける金田明憲氏

 まずは、デロイト トーマツ グループにおいてeスポーツに関する市場分析やコンサルティングを手掛ける金田明憲氏が登壇し、eスポーツの市場感と世界の動向について語られた。

 eスポーツとはテレビゲーム等を用いたスポーツである。たとえば、サッカーやバスケットボールというスポーツは、それぞれの競技が持つルールのなかでお互い競い合うもの。eスポーツも同様で、ゲームのなかのルールに従ってお互いが競い合う。主にデジタル空間で戦うという点は従来のスポーツと異なるが、ルールに則って競い、楽しむという点で、スポーツの一つと捉えることができる。

  日本と世界とでは、市場における人気のタイトルが異なっている。日本ではアーケードゲームやコンソールゲームでの格闘ゲームやスポーツを題材にしたゲームが中心である。昨今では、モバイルゲームでのパズルゲーム等が人気である。一方世界では、MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)と呼ばれるチーム制の陣取りゲームのようなものや、FPS(First Person Shooter)やTPS(Third Person Shooter)といったシューティングゲーム、また、RTS(Real Time Strategy)などの戦略ゲームが人気であり、PCを使ってプレイするのが一般的だ。

 なぜ、このような違いが生まれたかというと、日本はコンソールゲーム市場が大きく、ゲームを始めるきっかけが、コンソールゲームであることが多いためである。また昨今のモバイルゲーム市場の拡大も影響している。これに対して海外では、インターネットのブロードバンド化と並行してコンピューターゲームの市場が拡大し、2000年代前半にはすでにeスポーツという言葉が使われ始めたなど、ゲームのプレイ環境が異なっていたことが背景にあるためだ。

 2019年における世界のeスポーツ市場規模は、10億9600万ドル(約1200億円)規模と言われている。ただし、これはeスポーツを興行として捉えた場合であり、一つの側面に過ぎない。加えて、eスポーツの周辺には巨大なゲーム産業やウェルネス産業などが近接しており、今後のさまざまな広がりが期待できるため、多くの人が興味を抱いていると言える。

 一方、日本のeスポーツ市場規模は2018年において約48.3億円とされる。2017年の約13倍に急成長している点は注目に値する。また、スポンサー収入が75.9%も占めていることについても触れたい。eスポーツのプレイヤーやファン層には若年層が多いと言われており、多くの企業がそれらの層にアプローチすることを狙ってスポンサーとなっていると考えられる。今後、市場の成長に伴い拡大した収益が、選手の育成やプレイ環境の整備等に再配分される循環が生まれてくることで、市場全体がこれまで以上に盛り上がっていくものと考えられる。

 
↑ 世界のeスポーツ市場の規模と日本の市場規模。スポンサー収入の占める割合が大きい

 eスポーツが注目されている背景として考えられることは何か。ひとつは、eスポーツの持つボーダーレスという特性が挙げられる。老若男女や障がいの有無、国籍を問わず対戦できる。特に、先ほど述べたように若年層において支持されている点は大きいと言える。また、オンラインで遠く離れた選手同士が一緒にプレイできることに加え、会場設定の自由度が高くコストも抑えられるといった特徴もある。加えてeスポーツでは、VR・ARといった映像技術や、センサーテクノロジー、高度な情報処理など、最先端の技術が利用されることが多いため、それらをアピールする場にもなること。そして、娯楽だけにとどまらず教育や健康、福祉といった社会的な活動にも結びつくと考えられている点だ。

 もちろん、これから取り組んでいくべき論点もある。今年開催されたいきいき茨城ゆめ国体の文化プログラムとして採用され認知度が向上しているが、一方で、ゲームへの依存を心配する声があることや普及において個人がeスポーツを始める際に機器を購入するなど、従来のスポーツと比較して、一定の投資が必要である点などである。

↑ eスポーツを興行中心に捉えた場合、取り巻くステークホルダーは基本的に従来のスポーツと同様であるもの、
パブリッシャー(ゲームタイトル販売会社など)の存在が異なる点と言える

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は昨年より「eJ.LEAGUE」を開催し、eスポーツの発展だけでなく、リアルなJリーグのファン拡大や接点強化を図っている。これまでスタジアムに足を運ぶことのなった層がeスポーツを通じてJリーグへの興味関心を抱き、スタジアムに来場するきっかけとなることを期待しており、ファンの裾野を広めるための施策とも言われている。

 また、日本野球機構(NPB)もeスポーツ大会を開催しているが、その一つとして「スプラトゥーン2」というタイトルを用いている点は興味深い。野球にとどまらないスポーツ文化全体の発展を目指し、より幅広い層との接点を持ち、野球に興味を持ってもらうきっかけとすることを目的に、野球ゲームだけではないタイトルを活用している。

 最後に金田氏は「ここまで述べた話は、あくまで市場の概観です。eスポーツをより詳しく捉えようとすると、まだまだ整備が必要な部分も多く、言い換えれば、様々な可能性を秘めていると言えます。従来のスポーツでは当たり前かもしれませんが、たとえば、選手やチームの過去戦績の正当性を担保する仕組みや、プレイする環境や仲間を探す方法など、デジタル特有の課題が少なくありません。その為、今後の事業機会や市場規模の拡大を期待し、多くの企業が注目している市場だとご理解いただきたい」と語った。


■eスポーツとつながるサービスを提供する3社のパネリストたち

 続いて、eスポーツやスポーツに関して、新しいサービスをつくっている企業の3人が登壇。金田氏も加わり4名でのパネルディスカッションが行なわれた。まずは、登壇する3人が手掛けている事業について、簡単に紹介しよう。

↑ double jump.tokyo株式会社 My Crypto Heroes プロデューサー 石川駿氏

 ブロックチェーンを使ったゲームを手掛けており、スマホやPCで遊べるMMORPG「My Crypto Heroes」を開発。サービス開始からもうすぐ1年になり、登場以降、取引高・取引量・DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が世界1位を記録。現在は約7000DAUでユーザー登録数は7万人となっている。世界でもちらほらとブロックチェーンゲームが出ているが、No.1を維持し続けているという。

 歴史上のヒーローを操り、クエストやプレイヤー同士での対戦を行ない、経験値やレアアイテムを手に入れ育てていくのが基本的な遊び方。月額約2000円のサブスクリプションに登録しているユーザーが3500人おり、DAUの50%を占める。ユーザー数は、ほかのゲームに比べれば比較にもならないが、少ない人数ながらも、かなり熱心にゲームをやっていることがわかる。累計売上は約3億円だ。

 石川氏はブロックチェーン技術をゲームで使う意味として「新しい技術はゲームやアダルト系コンテンツにより世間に広まりやすいからです。これまでのソーシャルゲームの悲しいところは、サービスが終了するとすべてを失ってしまうところ。ブロックチェーンゲームなら、たとえ終了しても、キャラクターやアイテムは生き続け、ほかのゲームで使うことも可能となります。現在3つのゲームを製作中で、2020年ごろにはもっと広がるのではと思っています」と語った。

↑ よむネコ代表取締役社長の國光宏尚氏が「オアシス構想6カ年計画」として、
VRによって現実世界の制限を突破し、人々がより自由に生きる世界を創造すると発表。double jump tokyoも協力している
 
↑ MedVigilance株式会社 代表取締役 コウ ソウ

 MedVigilanceでは、既存のモジュールを採用して人に装着するセンサーを開発しデータを取得する事業を行なっており、主に保険会社やフィットネスクラブ、医療やリハビリ関係などと取引。筋電計「PULSTONE」やウェアラブル端末「LANCEBAND」、体組成計、電動歯ブラシといったものを開発している。また、アプリケーションも開発しており、VR系や健康系、Livelog.ioという健康データを集めるサーバーなども運営している。

 いま注力しているのが、eスポーツをより良いものにすること。すでに、大手フィットネスクラブと協力し、PULSTONEを利用してeスポーツが行なえないか研究している。体中にセンサーを付け、体の動きと力で、ゲームを操作できるようにすることで、観戦者への熱量を伝えやすくすること。

 いまのゲームは指先の戦いがほとんどで、映像からだけでは一般人にはゲームの激しさと選手の緊張感が伝わりにくい。普通のスポーツだと、動きがあり体全体を使って戦っているので、常に熱量が見え伝わりやすく、観戦している人も感動しやすい。

 体全体がコントローラーになれば、ゲームをやっている人の熱量が伝わりやすくなり、共感しやすくなると考えている。コウ氏は「中国のeスポーツ市場は、ホットマネーに恵まれ、ゲームも選手も経済圏もとても潤っており、普通のスポーツ選手とそん色ない収入を得ている。とはいえ、まだまだ収入が少ない人たちが多いため、もっと発展させるために、指先での戦いではなく、体全体がコントローラーとなるシステムを開発していきます」と語った。

↑ 両手、上半身、頭にセンサーを取り付けて、コントローラーとマッピングする
 
↑ 株式会社meleap CEO 福田浩士氏

 meleapはARを使った「HADO」という新しいスポーツを開発している。ヘッドマウントディスプレーをかぶり、腕にセンサーを付けて、エナジーボールを撃ち合い、得点を競うゲームで、3対3のチーム戦で行なう。2016年から世界大会を開催しており、スポーツ大会として世界各国のチームが集まって優勝を目指している。

 福田氏は「このようなARを使ったゲームをmeleapではテクノスポーツと呼んでいる。従来のスポーツはアナログスポーツ。その後、工業世界と連携したモータースポーツが生まれ、そして情報社会となったいまは、さまざまな技術を活かしたスポーツ、それがテクノスポーツです。サッカーにしてもモータースポーツにしても数兆円規模の市場があリますが、テクノスポーツは、その市場規模になりうると考えています」と語った。

 AR活用するのには理由がある。1つは直感的で誰でも楽しめる点。言葉の必要もなく、見ただけで理解できるので、世界展開もしやすい。そしてもう1つは、ARプラットフォームの普及だ。スマホはもちろんメガネタイプのものも開発中で、誰もがもっている時代になるからだ。

 現在、HADOができるフランチャイズ店舗をたくさんつくることを目指している。大会を運営しており、プロリーグ化して観戦者を増やそうとしている。ファンがたくさんつくことで、観戦ビジネスが生まれマネタイズが可能となり、サッカーを超える市場も実現可能だとした。

↑ 2021年に日本でもプロリーグを立ち上げる。それぞれの国に無償でライセンスを渡して、
各国に普及させ、FIFA的な立場で運営することを目指している
 
■先端技術・デバイスが変えるeスポーツの未来とは

 

 ここからは、金田氏を含めた4名によるパネルディスカッション「先端技術・デバイスが変えるeスポーツの未来」が行なわれた。モデレーターはガチ鈴木だ。

――金田さん、3社の事業内容を聞いてみて感想はいかがでしょう

金田氏(以下、敬称略):3社の目指しているところは、2つのキーワードで表せるかと思います。1つは「垣根を下げること」です。技術によっていかに間口を広げていくかという点です。ブロックチェーン技術やセンサー技術、AR技術などによって垣根を下げ、より多くの人が興味を持ち、参加することを促そうとしていると思いました。2つ目は「感情」です。スポーツの価値は感情を動かすことと言えます。人々は感動を求めスポーツを観たいと思い、それによって、チケット購入やスポンサー等の収益が生まれます。日本においても、eスポーツが人々の感情を動かし、感動を生む世界がそこまで近づいてきていると感じました。

――みなさん観戦するビジネスの拡大について話されていましたし、感情はコウさんが数値化していくかもしれませんね。新技術により新たな市場を生み出していますが、スポーツはもちろん、既存の何かと結びつけるための秘訣は何でしょう。

石川氏(以下、敬称略):大きい流れとして、いろんな技術が発達したことで、衣食住だけでなく、機能的価値が相対的に下がってきています。そんななかで、感情的価値が上がっていくことで、ゲームやスポーツといったエンターテインメントの価値が上がっています。それがアナログスポーツやゲーム、eスポーツなのだと思います。

HADOの話を聞いて、誰が見てもすぐわかる世界感が羨ましいと感じました。私の場合、ブロックチェーン技術とゲームを結びつけましたが、どう説明しても分かりづらいのが難点です。組み合わせる秘訣としては、ファンを増やすしかなく、SNSなどを通じて広めていくしかありません。まだ、ほかのARやVRよりは市場規模が小さいため、ユーサー自身がトッププレイヤーとなり、インフルエンサーになって発信していってくれればと思っています。

――ブロックチェーン技術は仮想通貨で投機的なイメージが付いてしまったため、マイナス面のほうが強くなってしまいました。ただ、ゲームになってくると、たとえば、モンハンの武器がドラクエで使えるようになる、そんな世界になる可能性が出てくると、ワクワクしてきますよね。コウさんはいかがでしょう。

コウ氏(以下、敬称略):既存の大きい産業の一つを尖らせていくこと。感動もそうですし、価値もそうですし、感情を爆発させることが重要です。どんな技術もそうですが、たとえば30年前にIBMがマシンを開発したけれども、それを動かすソフトが使いづらく、マイクロソフトがOSをつくったり、ゲームとブロックチェーンを結びつけて既存の価値を維持させたり、既存のゲームに感動を及ぼすようにしたりなど、1つのポイントを尖らせることが秘訣だと思います。我々の場合は、高齢化社会により人間の健康なライフスタイルがいずれ価値に結びつきます。そのためにセンサーを開発しています。

――組み合わせる秘訣ではなく、組み合わせる先が重要になってくるのではと感じました。続いて福田さんお願いします。

福田氏(以下、敬称略):ARとVRはどこにビジネスチャンスがあるのかよく聞かれますが、私自身はそのことに関して興味がないんです。基本的にやりたいことに対してどんな技術を使うか決めるのが重要だと考えています。我々の場合は「かめはめ波を撃ちたい」ですし、たとえば「自動運転をしたい」、「新しい働き方をしたい」というのもあるでしょう。それに対してどんな技術が必要なのか、現時点で実現できるのかを判断し、一歩一歩進んでいくというのが私の感覚です。

 HADOをつくったときは、「かめはめ波を撃ちたい」という気持ちでつくりましたが、これは運動になるなとか、コミュニケーションツールとしても使えるなとか、あとから気が付きました。さまざまな人に体験してもらうことで、新たな発見があります。なので、ゲームを楽しむだけでなく、さまざまなコンテンツとして広げようと模索しています。

――つくった時点では想像できなかった世界が広がっているということですね。

コウ:今回の3人が組み合わさると、ものすごいおもしろいことが、できるかもしれませんね

福田:まったく違う分野なので、おもしろいものが生まれる可能性がありますね。

石川:そうですね。たとえば優勝したらアイテムが他の人に手渡され受け継ぐようなことができるかもしれませんね。デジタルの世界で、優勝者が使っていたアイテムなどというものは、ブロックチェーンを絡めると、そこで使われたものという証明ができるのでぜひ使ってもらいたいです。選手が持っていたものを販売するというマネタイズにもつながるのではと思っています。

金田:大企業とベンチャー企業の違いとして、意思決定のスピードとリスクの取り方があると思っています。いまのお話を伺っていると、ゴールに対して自社にないものが何かを瞬時に判断し、それをその場で補完する術を判断して即行動につなげていく、一種アジャイル的な思想に近いと思います。これが、一度持ち帰って1ヶ月後に決断となると、その間に所与の条件が大きく変わってしまうこともあります。このため、デジタルスタートアップの世界では、現場でいかにアンテナを立てて、行動まで移せるか、ということが重要なのだと思いました。

――eスポーツの広がりについて、今後どうなると思っていますでしょう。

石川:ゲームやeスポーツで多くの収入を得られる人というのはごくわずかです。ところがブロックチェーンゲームの場合は、eスポーツが1億円を1人が稼ぐのに対して、100万円を100人が稼げる世界だと思っています。これは、プロ選手が生まれるというより、サラリーマン選手が出てくるイメージですね。稼げないというのをこのブロックチェーンゲームが支えてくれるのではと思っています。

コウ:このままでも10年はどんどん成長していくと想います。eスポーツではないサッカーの中継は色んな角度から見られたり、テニスの中継で判定に高度な技術が投入されたりと、見せ方が昔と変わってきています。今後、センサー技術を使って、たとえばメッシ選手がリアルタイムに感じている感覚を体感できるシートができるかもしれません。そんな体験ができるようになれば、いくらでも払う人はいるはずです。

――ARやVRは、視覚はあるものの触感が弱いので、センサー技術によって実現できるのでないでしょうか。

福田:eスポーツの課題は、やったことのない人が現状入りにくいところだと思います。いかに、プレイしたことのない人を巻き込めるのか考えていかなければならないと思っています。HADOもそこを解決しようと頑張っています。eスポーツの大会は、ゲームだけでなく、お客さんをいかに楽しませることができるかライブエンターテイメントとしての意識が重要です。また、観戦するのもゲームに参加しているような感覚にさせる仕組みづくりも必要だと思います。

 またeスポーツプレイヤーのキャリアについてもちゃんと考えていかなければなりません。引退したあと、稼げるのか? ゲームは反射神経の世界でもあるため、20代後半になると、もう引退になる可能性もあります。そのためしっかりとしたキャリアビジョンを描いていかなければなりません。プレイヤーは勝つことで、ファンが確実に付いたり、タレント性や人の良さに魅了されてファンが付いたりします。それは、引退してもファンが付いてきてくれ、何らかの活躍ができる仕組みを考えていきたいですね。

――「自分ごと」というのは重要だと思いました。eスポーツと自社の技術を結びつけるには何が大切でしょう。

金田:将来を考えるにあたって、従来のスポーツを例に挙げたいと思います。従来のスポーツでは、普及・育成・強化というピラミッドがあり、トップでの収益を再び普及・育成に投資することで、持続的に成長することができます。これは連続的な成長モデルであり、まずはこれを目指すべきと思います。他方、成長には非連続なものもあります。外資の参入や、突発的な人気選手・コンテンツの登場等がそれに当たります。連続的な成長の素地を作りながらも、非連続の成長を柔軟に取り込んでいくことも重要になると思います。

 自社のビジネスとeスポーツとをいかに結びつけるかという点については、eスポーツの特性を理解すること、そして、eスポーツ事業者と腹を割って話すことが重要だと思います。スポーツの世界では昨今、スポンサーシップのアクティベーションが重要視されるようになってきました。これは、広告宣伝モデルに留まらない、スポンサー企業の課題をスポーツによって解決しようというものです。アクティベーションの検討においては、スポーツの特性を知ること、そして、自社の課題を明確にすることが第一歩となります。それら縒り合わせ、課題解決に向けた施策に落とし込むことが求められます。eスポーツにおいても、同様の考え方が有効ではないかと考えます。

――アディダスは服や靴だけでなく、スポンサードしながら選手からデータをもらって、次の製品開発につなげています。スポーツ業界は広告モデルを変えていく必要がありますよね。では最後の質問として、いま注目しているものは何でしょう?

金田:5Gに代表される通信容量や速度の向上に加えて、AR技術が進歩することにより、顧客の体験価値を多くの場所で提供可能になると考え、注目しています。例えば、これまでは会場でしか味わえなかった観戦体験が、遠く離れた他のスタジアムや施設でも臨場感をもって再現できるようになると、これまで一つの場所に紐づいていた価値を増幅することができます。これによって、今まで稼働が低かったアセットを活用することができれば、単なる遊休資産の活用に留まらず、地域の活性化にも寄与するのではないかと考えます。

石川:ARですね。現実の世界にARで見えているものはデータなのですが、データは価値がないと言いつつ、AR上で写っているデータには価値があると思っています。それは金銭的な価値ではなく、感情的な価値で、ARと感情的価値との紐付けに注目しています。

コウ:仕事として注目しているのは、何歩以上歩いたら保険が安くなるとか、これまでにないシステムですね。健康のライフスタイルは、これからの高齢化社会において価値があり、社会貢献にもつながると思います。健康を数値化して指標となるよう目指します。

福田:視聴者参加型ライブエンターテインメントです。eスポーツやスポーツに限らず、ライブエンタメがすごく盛り上がっている感覚があります。ネットだけでなく、集まってお祭り感覚で楽しめる場が求められていると感じています。かつ見るだけだけでなく、自分も参加していくことで影響をおよぼすことになれば、「自分ごと」になってくると思います。単純にいうと、賭け事はその1つで、日本では違法になるため海外でやってくというのはあります。ほかにも好きな人を応援するツールだとか、いろいろな切り口があるのではと思っています。また、最近はVtuberを観るために観客が集まって応援しています。生身の人間ではできない演出もできるし、それをARやVRと結びつけることで、ライブエンタメがもっとおもしろくなると思っています。

――ありがとうございました。


 
■関連サイト
 横浜ガジェットまつり2019

 

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