UPDATE: 2019/12/24

横浜発のベンチャー創出を支援「YOXO BOX」オープニングイベント開催

横浜らしいビジネスエコシステムとはなにかを議論

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 10月31日、横浜市は関内にベンチャー企業の成長支援事業の拠点として「YOXO BOX」を設立し、開所式とオープニングイベントを開催。オープニングイベントでは、横浜市経済局から本施策についての講演とパネルディスカッションを2部構成で実施。第1部は、本事業を推進するコンソーシアム各社による事業説明、第2部では、横浜らしいエコシステム、コミュニティーについての議論が交わされた。

 横浜市経済局による講演では、横浜市経済局 成長戦略推進部 新産業創造課長の高木 秀昭氏が横浜市における「YOXO BOX」の政策的な位置付けについて説明した。

 横浜市経済局 成長戦略推進部 新産業創造課長の高木 秀昭氏

 みなとみらい地区には、10年前から日産の本社ビルや富士ゼロックスの研究拠点があり、2019年には資生堂、京セラなど多数の企業の研究開発拠点が開設。2020年にはコーエーテクモゲームス本社、清水建設の大規模オフィスビル「横浜グランゲート」などの竣工が予定される。特徴的なのは、いずれの企業もオープンイノベーションのR&D拠点と位置付けていることだ。

 一方でみなとみらいに隣接する関内エリアは、クリエーター活動が盛んで、スタートアップ企業の誘致を積極的にしている。みなとみらいの企業と関内のスタートアップをつなぎ、オープンイノベーションを促進するため、イノベーターの交流の場としてYOXO BOXが設置された。

 YOXO BOXの施設では、ベンチャー企業等を対象にした「YOXOアクセラレータープログラム」、ベンチャー支援の専門家に個別相談できる窓口の設置、イノベーション創出のためのビジネスイベントの開催などに活用していく予定だ。

YOXO BOXの機能を担う5社が事業の詳細を説明

 YOXO BOXの運営は、三菱地所株式会社、株式会社アドライト、株式会社角川アスキー総合研究所、株式会社plan-Aが共同企業体として事業を進めている。パネルディスカッションの第1部では、コンソーシアム5社から役割分担と事業が説明された。

●YOXO BOX内にベンチャー支援オフィス12室を設置
 三菱地所株式会社 横浜支店 安本 武史氏

 事業全体を統括する三菱地所の安本 武史氏は、YOXO BOX内のベンチャー支援オフィスについて紹介。ベンチャー支援オフィスは1階に3室、3階に9室の計12室があり、各部屋の定員は5名~8名。入居者には、国内外のベンチャー企業、大企業のイノベーション部門、ベンチャーを支援するVCやコンサルティングファームを想定しており、市外からの企業誘致も積極的に行なう。オフィスの入居者は、同施設内のラウンジやミーティングルームの利用、専門家が常駐する相談窓口を活用できるのがメリット。

 三菱地所は、1983年からみなとみらい21地区の開発事業を進めており、近年はR&D系企業やエンターテインメント施設が増えているという。2019年よりエリアの複数の企業と連携して事業創出を目指す「MINATO MIRAI 21 Activation Program」のパートナー事業者としても参加し、イノベーションに取り組んでいる。

●コミュニティー熟成のため月4回の公式イベントを実施
 株式会社角川アスキー総合研究所 鈴木 亮久

 角川アスキー総合研究所の鈴木は、ASCII STARTUPの事業内容とYOXO BOXで開催する交流イベントについて紹介した。

 ASCII STARTUPは、IT系サイト「ASCII.jp」とデジタル情報誌「週刊アスキー」を中心としたメディアによる情報発信のほか、IoTとハードウェアベンチャーの展示会「IoT H/W BIZ DAY」や各種セミナーの開催、ビジネスコンテストの運営などを手掛けている。

 ASCII STARTUPは、YOXO BOXでの交流イベントの企画と情報発信を担当しており、週1回のペースでコミュニティイベントを実施していく予定だ。イベント内容は、スタートアップのイノベーションのエコシステム構築するヒントとなるテーマを中心に準備を進めている。そのひとつとして、横浜市内のスタートアップを可視化するため、トークイベント形式で横浜の地図を作る「横浜ベンチャーマップ作成イベント」を定期開催していくとのこと。

 最新のイベント情報やコンテンツをウェブサイト「ヨコハマ・イノベーターズ・ハブ」にて随時発信しているので、ぜひチェックしてほしい。

●関内から横浜市内外へ企業や人材のネットワーキングを促進
 株式会社plan-A 相澤 毅氏

 plan-Aの相澤 毅氏は、YOXO BOXの施設整備と、同社の今後の役割について説明した。YOXO BOXの施工・内装では、plan-Aがプロジェクト全体をマネジメントし、横浜市内の工務店ROOVICEが設計・施工、関内のデザインファームNOSIGNERがロゴデザイン、サイン、内装デザインの監修を手掛けている。施設内の設備は、YOXOのロゴと同じ青を基調に統一しているそうだ。

 plan-Aは、複数の企業や人をつなぎ、まちづくりやイノベーションのプロジェクトを実現するためのネットワーク形成を支援する会社だ。今後は、YOXO BOXをスタートアップの拠点として活用するため、まずは関内エリアに点在するコワーキングスペースやシェアオフィスと連携して交流を進め、徐々に横浜市内、市外へとネットワークを広げていきたい、と語った。

●専門家や大企業、VCと連携した相談窓口体制
 有限責任監査法人トーマツ 村田 茂雄氏

 有限責任監査法人トーマツの村田 茂雄氏からは、YOXOの窓口相談体制について紹介された。

 デロイトトーマツグループは、ベンチャーの起業から上場後までを支援するコンサルティングファーム。日本全国に23拠点を設け、各地域でピッチイベントや、官公庁や自治体主催のアクセラレーションプログラムを実施するなど、国内外の企業をつなぐオープンイノベーションのハブとして活動している。このデロイトトーマツのネットワークを活用し、YOXOの窓口相談では、士業の専門家、大企業、VCが常時常駐し、ビジネスや法律について、いつでも相談できる体制となっている。

●横浜発の事業創造を目指す「YOXOアクセラレータープログラム」
 株式会社アドライト 木村 忠昭氏

 アドライトの木村 忠昭氏からは、「YOXOアクセラレータープログラム」についての説明がなされた。YOXOアクセラレータープログラムでは、横浜市に拠点をもつベンチャーを育成し、横浜発の事業を創出することを目指して実施される。創業3年以内のスタートアップを募集し、審査を得て5~10社を選出、YOXO BOXの施設を利用して3、4ヵ月の育成プログラムを実施する。

 特に分野は限定せず、幅広いテーマのスタートアップを募集しているとのこと。すでに第1期は動き出しているが、今後も継続的に募集をしていく予定だ。

 パネルディスカッション第2部は、有識者から見た、横浜でのビジネスエコシステムの在り方、拠点の活動/コミュニティーの方向性について議論が展開された。

 登壇者は、横浜国立大学大学院国際社会科学研究員 教授/先端科学高等研究院 共創革新ダイナミクス研究ユニット主任研究者 真鍋 誠司氏、株式会社村田製作所 新規事業推進部 新規事業推進5課 オープンイノベーション推進チーム エキスパート 牛尾 隆一氏、株式会社アペルザ代表取締役 石原 誠氏、NOSIGNER代表 デザインストラテジスト 慶応技術大学特別招聘准教授 太刀川 英輔氏の4名。モデレーターはASCII STARTUPの鈴木が務めた。

横浜らしいビジネスエコシステムの形とは?

 最初のトピックは、「横浜らしいビジネスエコシステムの形とは?」

真鍋氏(以下、敬称略):地域性としての「横浜らしさ」というのは正直、今の段階では難しい。エコシステムには、まずそのコアになるビジネスがなくてはいけない。ビジネス自体がまだ生まれていないなかでエコシステムについて語るのは時期尚早かな、という気がします。まずは横浜が目指すビジョンを定めて、民・公を合わせたコミュニティー形成からスタートして、エコシステムの構築を徐々に進めていくのがいいでしょう。大学側としては、将来の社会を担う大学生に、こうしたイベントで企業やスタートアップの方々と関わるように参加を促していきたいです。

牛尾氏(以下、敬称略):東京は丸の内や渋谷などにイノベーション拠点が多数あるが、拠点同士がつながっていない。横浜であれば、つながることができそうな気がしています。横浜拠点の大企業とベンチャーがひとつにつながれば、それが横浜らしさになるのでは。

石原氏(以下、敬称略):エコシステムは循環だと考えています。シリコンバレーでは成功者が次の世代を支援して循環が起こっています。我々スタートアップが普通では出会いにくい大企業や先輩起業家の方々と知り合える機会をいただけるとありがたいな、と思います。

太刀川氏(以下、敬称略):150年程前の横浜開港当時は、世界中から見たことのない荷物が届き、日本でもあたるかもしれない、と新しい文化や商品が生まれた時代があった。しかし、こうしたカッコよくて新しいコンテンツが最近の横浜では見られなくなっている。横浜らしさを取り戻すには、新しいこと、ヒップなことをやることが大事ではないでしょうか。

 横浜国立大学大学院国際社会科学研究員 教授/先端科学高等研究院 共創革新ダイナミクス研究ユニット主任研究者 真鍋 誠司氏

YOXO BOX(関内)のコミュニティーはどう築いていくか?

真鍋:そもそもコミュニティは地縁や血縁などがスタートであり、よほどの目的志向がないと集まりにくいので、何か枠組みをつくる必要があります。YOXO BOXには明確なプログラムが用意されているので、放っておいてもコミュニティーはできると思っています。近隣のコワーキングスペースとも連携し、キーパーソンを結ぶだけでもコミュニティーは広がっていきます。

牛尾:どんな人が集まるかですべて決まると思います。来たいと思ってくれる仕掛けをつくる、積極的に呼んでくるなど、面白い人を集めていくと、自然にコミュニティができるのではないでしょうか。

石原:ベンチャー界隈ではよく勉強会がありますが、会場はたいてい東京で、正直参加するのが大変です。横浜で勉強会を開催して東京の人を呼べるようになれば、コミュニティの厚みが出ると思います。

太刀川:私たちは横浜DeNAベイスターズのブランディングをご一緒しているとき、「このプロジェクトはベイスターズのブランディングじゃない。ベイスターズが横浜をブランディングするんだ」と合言葉のようによく言っています。これは重要な視点で、大きなパーパスを掴むとコミュニティになる。パーパスに挑んでいる人を「カッコいい」と褒め合う環境をつくることが大事じゃないかな。

鈴木:牛尾さんにお聞きしたい。関西のオープンイノベーション・コミュニティーは、かなり早い段階で形成されていますが、どのように成長していったでしょうか。

牛尾:早くから大企業の中でオープンイノベーションを推進するキーマンとのネットワーキングは始まりましたが、活発に活動できているかというとまだまだだと感じています。関西、横浜と地域にこだわらず、コミュニティがつながれるようになればいいと思います。

 株式会社村田製作所 新規事業推進部 新規事業推進5課 オープンイノベーション推進チーム エキスパート 牛尾 隆一氏

横浜では何と何を掛け合わせたらイノベーションが生まれるか?

牛尾:遠いところにあるものほど、くっついたときに大きくなる可能性があるとよく言われます。何が自社の技術と合うのかはわからないからこそ、探すことが大事。そのために、この場所があるのだと思います。

真鍋:離れていれば離れているほど、多様性を基に試行錯誤しないと、イノベーションは生まれない。他方で、お金と時間を無限に使えるわけではないので、効率性も考えながらマネジメントしていく必要がある。そのバランスをいかにとるか、という非常に難しい問題です。

太刀川:答えがない以上は、ランダムにたくさんの数、種類で試すしかない。組み合わせ方については判断しないこと。試すスピードが落ちないように、まずはどんどん掛け合わせてみる。ふるいにかけるのはあとからでもいいと思います。

真鍋:組み合わせでは必ず失敗が生まれるので、いかにそれを許容するか。まずは、失敗を許容する文化を押し上げていかないと、チャレンジはできないですよね。

 株式会社アペルザ代表取締役 石原 誠氏

YOXO BOXで、こんなイベントをやってほしい!

真鍋:起業前の学生向けに、ビジネスプランコンテストなど、学生主体の発表する場を設けてもらいたい。企業の皆さんにも何かいいフィードバックが得られるのではないでしょうか。

牛尾:大企業の面白い人を呼んで、イベントをやりたいです。いくつかアイデアがあるので、来年1月あたりにぜひやりましょう。

石原:私は愛知県の生まれで横浜にゆかりはないのですが、横浜にはいいイメージがあります。インターネットのスタートアップはほとんどが東京。横浜での起業はハンデでしかないのに、あえて横浜を選びました。僕にとって、横浜で働くことがブランドだと思っています。そこでぜひやってほしいのが採用のイベントです。ひとつの企業ではなく、「横浜で働くってどういうこと?」「横浜で働くとこんなイイ事がある」というのを他の地域の方に伝えられたらと思います。

太刀川:デザインコンサルティングの会社をやっていると「お高いんでしょ」と言われたりしますが、弊社の収益の3割程度は、成功報酬型に変わってきています。デザインを投資として考えることが重要だと考えています。スタートアップの段階で、コンセプトや表現を磨くとすごく成長の力につながります。コミュニケーションやプロダクトをもっと伝わりやすい形にしていくために、デザインがツールとして使える。そして、最初期のほうがデザインの全体戦略は立てやすいのです。せっかく横浜が続けてきた創造都市政策や街中フェス「関内外OPEN!」などの取り組みともつながり、横浜にスタートアップのエコシステムを一緒に育てていけるといいと思います。

 デザインストラテジスト 慶応技術大学特別招聘准教授 太刀川 英輔氏

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