UPDATE: 2020/01/31

スノーデン⽒、ファーウェイ重役が登壇したWeb Summit 2019報告会

カンファレンスに参加した有識者や出展企業がイベントの魅⼒を語る

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第1部「Web Summitとは?」

第1部のトークセッションでは、ウェブサミット⽇本事務局代表の満⽊ 夏⼦⽒より「Web Summit 2019」の概要が紹介された。

ウェブサミット⽇本事務局 満⽊ 夏⼦⽒

 Web Summitは、2009年にアイルランドで発⾜し、2016年以降はポルトガルのリスボンに会場を移して開催されている。初開催から10年⽬にして、参加者7万⼈以上、スタートアップ2000社以上が出展する世界最⼤級のテクノロジーカンファレンスだ。政府関係のブース出展も多く、⾃国スタートアップの宣伝、外資誘致の場となっている。

 Web Summitの特徴のひとつは、⾃社開発のイベント専⽤アプリを参加者に提供していることだ。会場に⼊場するにはアプリの登録が必要で、参加者同⼠の交流、セッションや展⽰のレコメンド、各国⾔語への翻訳などの機能を備えている。出展者やスタッフ、セッションの著名な登壇者に⾄るまで、全参加者と直接メッセージをやりとりできるのは、Web Summitならでは。

 もうひとつの特徴がWeb Summit名物のナイトサミット。リスボンの街のレストランやバーと提携し、会期中は毎晩ネットワーキングパーティーが開催されるという。

 Web Summitは審査制で、専⾨の審査チームによって選ばれた企業だけが出展できるシステム。2019年の出展企業は2000社に対して、数万件の応募があったそうだ。

 スタートアップは、アーリーステージ(投資額1億円以下)の「ALPHA」、ミドルステージ(投資額3億円以下)の「BETA」、ネクストユニコーンを⽬指すステージ「GROWTH」の3つのステージで区分けして募集。各ステージの枠内で成⻑のポテンシャル、Web Summitとの相性、プロダクトとチームの構成、ピッチの質などを審査し、出展企業が選出されるそうだ。

 世界から注⽬されているWeb Summitだが、全参加者7万⼈に対して、今年の⽇本からの参加者は200⼈とまだ少ない。今年は企業スポンサーとして富⼠通が初出展し、スタートアップの出展数も過去最多と、着実に知名度は⾼まっている。スタートアップにとっては、Web Summitの出展は、世界進出への登⻯⾨と⾔えるだろう。

Web Summit

写真で振り返るWeb Summit 2019

 後半のパネルディスカッションは「写真で振り返るWeb Summit 2019」と題し、現地の盛り上がり、セッション、ピッチ、展⽰ブースでの印象的な場⾯を振り返った。

 登壇者は、ウェブサミット⽇本事務局の満⽊ 夏⼦⽒、⽇本貿易振興機構(JETRO)イノベーション・知的財産部スタートアップ⽀援課の新⽥ 沙織⽒、富⼠通株式会社 グローバルマーケティング本部の安⻄ 潔⽒、株式会社karakuri Co- founder & CPOの⼤塚 仁道⽒、ASCII STARTUPの鈴⽊ 亮久。

左から、株式会社karakuri ⼤塚 仁道⽒、⽇本貿易振興機構(JETRO) 新⽥ 沙織⽒、
富⼠通株式会社 安⻄ 潔⽒、ウェブサミット⽇本事務局 満⽊ 夏⼦⽒、ASCII STARTUP鈴⽊ 亮久
メトロ、公共交通機関に案内表⽰シール

鈴⽊:「事前に聞いてはいましたが、ものすごい混雑ですね」

満⽊⽒(以下、敬称略):「⼣⽅6時からオープニングですが、お昼過ぎには受付をしないと、セッション会場に⼊れないほどです」

鈴⽊:「街と企業の協⼒体制がものすごく敷かれていたのは感⼼しました。地下鉄の駅はもちろん、⾞両内の案内表⽰にまでシールが貼られていて、乗り換えに迷うことなくたどり着けます」

基調講演にスノーデン⽒、ファーウェイの重役が登壇

安⻄⽒(以下、敬称略):「亡命先のロシアからリアルタイムで中継するのも先端的ですし、スノーデン⽒が話されたこともウェブサミットを象徴する内容でした」

鈴⽊:「セキュリティーとデータの取り扱いですね。ヨーロッパはGDPRで個⼈情報保護が強化されていってますが、規制強化に対してスノーデン⽒はデータを取り扱う側の使い⽅に問題だがあると主張していたのは印象でした」

安⻄:「ファーウェイ・テクノロジーズのCEOの講演は、英語はさほどうまくないのに、堂々としていて、メッセージはしっかりと伝わっていた。そして、⽇本企業も⼗分いけると感じました」

鈴⽊:「内容的には、2者とも政治的なメッセージはまったくなくて、サービスを重視した内容でしたよね」

満⽊⽒:「スノーデン⽒のスピーチの最後にGoogleやファーウェイへを批判的発⾔をしますが、このあとファーウェイのCEOが登壇し⾃社の⾒解とサービスについて述べるという公平な意⾒交換の場となっています。」

Banjo Robinson ケイトボイルCEOによるベンチャーピッチの様⼦

鈴⽊:「僕が注⽬したのは、Banjo Robinsonというイギリスのベンチャー企業。Banjoという猫が世界中を旅しているという設定で、世界中の⼦どもたちと⽉に1回⼿紙でやりとりするサブスクリプションのサービスをしています」

⼤塚⽒(以下、敬称略):「僕はむしろピッチに出たかったのですが、2000社のうち登壇できるのは100社。60秒のピッチ動画を撮って送ったのですが、残念ながら選考で落ちてしまいました」

ベンチャーブースは⽇替わり

満⽊:「全体で2000社。⽇替わりなので、スタートアップ視察に来ている⽅は、毎⽇ブースを回ってほしいですね」

鈴⽊:「⽇本企業を中⼼にセッションを組んで、ブースを回っていたので、ほかのセッションを⾒られなかったけれど、それでも⼤変だと感じました」

満⽊:「スタートアップブースはさほど⼤きくないので、すぐに⾏列ができます。オススメは朝1番に回ること。お昼過ぎは混みます」

⼤塚:「午前中は⽐較的、ゆったりしている感じがしました。9時から開場ですが、10時頃からようやく⼈が増えてくる感じです」

⽇本企業発の協賛ブース

鈴⽊:「富⼠通さんは、⽇本企業初の協賛ブースを出展されましたよね」

安⻄:「3⽇間⽇替わりで24社が展⽰を⾏ないました。応募条件が設⽴5年以内のスタートアップで、そこからさらに審査があります。スポンサーだから⼤⽬に⾒てもらえるかと思っていたのですが、それでも厳しかったです」

新⽥:「昨年ジェトロから参加したときには、ほとんどが落とされてしまったので、今回は事前に交渉し、ジェトロチームに限り10年までOKにしてもらいました。それでも選考で落とされてしまいましたが」

満⽊:「数万件の応募があり、その中から2000社を選ぶので、落ちている企業のほうが多いんですよ」

⼈が多すぎなナイトサミット

鈴⽊:「ナイトサミットは⼈が多すぎて飲み⾷いできそうにない雰囲気でしたが、皆さんは参加されましたか?」

⼤塚:「あちこちに美味しいお店があり、たまたま隣に座った⼈がブラジルのインベスターの⽅で会話がはずんだりしました」

安⻄:「ナイトイベントは、けっこう⼤事です。ここでしか会えない⼈に会えます。午前中は会場に⼈が少ないのは、ナイトイベントで遅くまで話しているせいでしょうね。プライベートなパーティーにうまく潜り込めると、濃いネットワークに繋がれて、現地でしか得られない貴重な情報を⼿に⼊れられることがあります」

満⽊:「地元のバーやレストランなので、会期中だけ営業時間を延⻑してくださっています。リスボンの新しい観光エリアをナイトサミット会場に選ぶなど、観光PRの場としてもうまく活⽤されていますね」

ジェトロのジャパンパビリオンにJ-Startup5社を含む15社が出展

 第2部では、ジェトロの新⽥⽒、富⼠通の安⻄⽒、スタートアップのALPHA枠に⾃社で応募・出展したKarakuriの⼤塚⽒から、それぞれの出展の⽬的と成果が報告された。

⽇本貿易振興機構(JETRO)イノベーション・知的財産部スタートアップ⽀援課 新⽥ 沙織⽒

 ジェトロの新⽥⽒は、ジャパンパビリオンの成果を発表。

 ジェトロのジャパンパビリオンには、J-Startupを中⼼とした15社のスタートアップが出展した。J-Startupは、経産省が推進するスタートアップ育成⽀援プログラムで今年は150社が採択され、国内の⽀援はNEDOが担当し、海外展開についてはジェトロがサポートしている。

 J-Startupからは宇宙企業のispaceとastroscale、⼈⼝流れ星のALE、ヘルステックのFiNC Technologies、昆⾍テクノロジーのMUSUCAの5社が参加。また今回のWeb Summitには、アクセラレーター/VCのPlug and Play JapanやOrangeが協賛しており、それぞれデモデイで優勝した、スマートフットウェアを開発するno new folk studio、ARスポーツ事業を展開するmeleapなどが参加した。

 ⽇本企業の参加⽬的は、欧州マーケットでのフィードバック収集、市場調査、ローンチ予定のプロダクトのPRやネットワークづくり、海外CVCからの資⾦調達、インターナショナルなPRやブランディングなどが挙げられる。

 出展企業からのフィードバックとしては、「スタートアップが信⽤を得る意味で、このようなグローバルに発信⼒のあるイベントでステージ登壇の機会が得られたのは⼤きい」「投資家/パートナーシップの両⾯で有益な話をする機会を持てた」、「ただ出展するだけではダメで、積極的に働きかける必要があったのが反省点」といったコメントが得られたそうだ。

富⼠通ブース内にスタートアップ24社が出展

富⼠通株式会社 グローバルマーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部 FUJITSU ACCELERATOR Co-Founder、海外担当 安⻄ 潔⽒

 富⼠通の安⻄⽒からは、今回初出展した⽬的、⼤企業が出展することによって得られるメリットが紹介された。

 富⼠通のブースでは、⽇替わりでスタートアップ8社ずつが出展した。出展の⽬的は、2019年度から開始した欧州版のアクセラレーションプログラムの認知を広めること。欧州版は、富⼠通の顧客×富⼠通×スタートアップの3社間で新規事業を創出することを⽬指しており、3社の協業をイメージしてもらうため、ブース内で富⼠通顧客向けの共創ワークショップを実施したという。

 Web Summitに⼤企業が出展するメリットとしては、CESやSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)などに⽐べて費⽤対効果が⾼いこと。また前⽇にはCorporate Innovation Summitという、⼤⼿企業の経営者層が集まる場に参加して親睦を深められる。

 北⽶に⽐べると、ヨーロッパのスタートアップのバリエーションは低い傾向があり、投資家や出資を含めた協業を検討するCVCには魅⼒的だ。協業先のスタートアップだけでなく、登壇者、エコシステムを回す⼈たちとのつながりを持てることも⼤きな収穫だ。

 富⼠通アクセラレータプログラムには、約25の事業部⾨や関係会社が参加している。2019年から同プログラムを欧州はじめ、海外に展開している。Web Summitに関しては、来年も出展を計画中とのこと。

アプリ活⽤による攻めのアプローチが商談につながる

株式会社karakuri Co- founder & CPO ⼤塚 仁道⽒

 Karakuriは、オンラインパブリッシャー向けデータマーケティングプラットフォーム「Insight SearchEngine」を開発しているスタートアップ。Web Summitの出展は、海外のテストマーケティングとインベスターの獲得が⽬的だ。2019年2⽉に⾃社で申し込み、Web Summitの事務局とのSkype経由でのやりとりを経て、申し込みから3、4週間後に合格通知が届いた。

 出展までの準備としては、ピッチ⽤のスライドと、ピッチコンテストに応募するためのプレゼン動画、ブースで流す動画の作成、投資家⽤の英語のQ&Aなどを⽤意。また、Web Summitアプリで来場する投資家をリストアップして事前に調査してアプローチしていった。アプリを使えば、各投資家が興味のあるカテゴリーがわかり、業界のトレンドも⾒えてくる。今年はフィンテックやAI、環境系がトレンドだったという。

 しかし、現実にはすぐに投資家との商談につながるわけではない。KarakuriはALPHA枠で参加したが、投資家は、BETAかGROWTHを投資対象と考えており、シード期のスタートアップは考えていない、と⾔われることが多かったそうだ。

 Web Summit側からの投資家とのマッチングもあるが、オファーがあったのは2件ほど。 「ただ出展するだけでは成果は得られない。積極的にアプローチをする必要があります」と⼤塚⽒。アプリを活⽤して、500名ほどにメッセージを送り、インベスター7件、アクセラレーター5件、⾒込み客13件との商談につなげることができ、帰国後も商談のやりとりを続けている。

 会場の来場者からの反応も良かったようで、海外でもサービスが通⽤することが確信でき、海外展開への次の課題が⾒えたのが⼤きな成果だったようだ。

 Web Summitは世界最⼤級のスタートアップイベントとして、世界中のトップ企業が注⽬している。スタートアップはもちろん、有望なスタートアップやパートナーを探している⼤企業や投資家にとっても現地で得られるネットワークの価値は⼤きい。欧州進出を⽬指すなら、ぜひ来年以降の参加を検討してはいかがだろうか。

■関連サイト

 Web Summit

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