UPDATE: 2020/02/26

スタートアップ出展者が感じたCES 2020の注目ポイント

「YOXOグローバルセッション CES 2020報告会」レポート

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 2020年1月27日、横浜関内にあるスタートアップ育成拠点「YOXO BOX」にて、2020年1月頭に米ラスベガスにて行なわれた世界最大級のテクノロジー・カンファレンスであるCES 2020の報告会が開催された。定期的に開催しているYOKOグローバルセッションの1つで、今回はCES 2020のスタートアップ系展示の中でのトレンドや注目製品、各国ブースの状況などを紹介した。

 登壇したのは、J-STARTUPとして出展したFutuRocket株式会社のCEO & Founder美谷広海氏とPLANTIO, Inc.のCo-founder & CEO 芹澤孝悦氏の2人。モデレーターは株式会社アドライトの代表取締役CEO木村忠昭氏が務めた。

今年のCESで気になったプロダクトたち

 まずは、美谷氏によるCES 2020で注目した製品や会場で感じたスタートアップ企業の現状について語った。

FutuRocket株式会社のCEO & Founder 美谷広海氏。
2017年に設立後、バルセロナ 4YFNやパリViva Technology、CESのJ-Startupパビリオンに参加。
前職から6年連続でCESに出展者として参加している

美谷氏:以前のCESはコンシューマー向けの世界最大の家電見本市でしたが、今はコンシューマーエレクトロニクスショーとは呼ばないでほしいと言われていて、あくまでCES(シーイーエス)とブランディングされています。家電に関わらず、消費者と接点をもつような、テクノロジー全般のイノベーションを発表する最大の展示会という位置づけでしょうか。

テックイースト昔からの大手が中心。近年は自動車メーカーの出展も相次いでいる。
テックウェストは、スタートアップ企業やスマート家電系が中心で、全部で5000社ぐらいあった

メインのコンベンションセンターでは、ソニーが彼らの半導体技術を使って、実際に走行できる自動車を発表され注目を集めていました。ビジョンを見せるとともに、もしかしたら今後、自動車メーカーを買収する動きもあるかもしれません。

 また、中を覗き込むと視点が変わる3D的な映像を投影するディスプレーを発表していました。ソニーはこれまで新製品の展示は行なってきましたが、今後ソリューションにつながるかもしれないプロトタイプの製品を展示したのは新しい試みだと思います。

 トヨタが公開した「Woven City(ウーブン・シティー)」。具体的な展示物はありませんでしたが、コンセプトを内外にうまくアピールしていて、会場で話題になっていました。これからいかに他社を巻き込んでいけるか、良いビジョンを示せたのではないでしょうか。

 そして今年のCESで話題になったのがデルタ航空でしょう。なぜ航空会社が家電業界に出展したのかという意味合いも議論されましたし、テクノロジーに対してどのように取り組んでいるのかも注目されていました。これからの企業はテクノロジーとどう向き合うのか。お客様へ価値を提供していくにあたって、自ら情報を発信してアピールしていき、技術の評価や他社に先駆けて提携してもらうことを狙っているのではないかと思われます。P&Gやアメリカ郵便公社など消費者と接点を持った企業が存在感を増していると感じました。

デルタ航空の従業員向けのパワードスーツ

 サムスンが発表した「NEON」というプロジェクト。パネルのなかに色々なキャラクターが存在するという、デジタルの人間的なプロジェクトとして発表され注目されていました。AIとCGを使ったアバター的な取り組みと考えられていましたが、実は録画したものだったことが判明してみんながっかりしていましたね。ただ、等身大のパネルの中にキャラクターを内在化させるという意味ではよかったのではないでしょうか。

ローランドはiPhoneを2台つなげると音声や映像をミキシングしたりできる機材は、
YouTuberのスタジオが簡単に作れる
 
昌原(チャンウォン)中国のテレビメーカー。非常にデザイン性が高く、
裏面もスッキリしていてケーブルが見えない工夫されている。日本企業にとっても手強い存在
 
パナソニックは豪華絢爛ではあったが、どういったものが強みなのか明確さがなかった。
バッテリーなどB to Bに注力すると、消費者との接点が消えてしまうため、今後そこをどう補っていくのかが日本企業の課題
 
アメリカの郵便公社USPS。届くのが遅いなど不平不満が多かったりするが、
テクノロジーに取り組み、展示会にも出展するなど本腰を入れてきた
 
サンスイを買収した中国メーカー。日本というコンテンツを中国企業が生かしていると感じた
 
中国のARグラス。かなりできが良く、スタイリッシュで違和感のないもの。
上半分に透過で映像が重なり、自然でクオリティーも高かった
 
単焦点のプロジェクター「Hachi Infinite」。中国のメーカーだが日本らしいネーミングで、うまくやっている
 
深センで創業数年の企業Insta360は、360度カメラの市場に殴り込んでいる。
撮影素子やバッテリーを組み合わせて、自分にあった機材にできる。
既存のカメラの延⻑線上ではなく、スマホ世代のアプローチでものづくりがなされていると感じた
 
セグウェイのモビリティ。売れるかどうかは別問題で、コンセプトに対して市場がどう受け入れるか。
面白いのか、イケてないのか、さまざまな見方に出会えるのがCESのいいところでもある

 JETROが支援し日本のスタートアップを応援するJ-Startupでは今回28社が出展。昨年よりは増えてはいますが、まだまだ少ないのが現状。別の日本企業を紹介するブースを含めても全体の5%にも満たない。韓国は日本の3、4倍。台湾もかなり力を入れていました。フレンチテックは今年400社ほど。日本のスタートアップや中小企業はどんどん出展してほしいですね。

ゲートボックスは、初音ミクのような二次元の嫁みたいな感じでアバターと一緒に暮らすというコンセプトだが、
米国企業と組んでリアル志向のトレーナーや秘書みたいな感じのキャラクターを表示。
ネットニュースでは米国のキャラクター好きでもこれはないとも言われていた。
ゲートボックスとしては日本人と米国人の好みを迷われてした選択だったのではないかと思う。。
CESは試行錯誤で挑戦する実験の場にもなっている
 
サムスンが支援するスタートアップ企業。
ディスプレーの上に2眼カメラを設置して、タッチパネルではないディスプレーでもタッチ操作可能にする製品。
米国はテレビが安く、これと組み合わせれば、コスト的にもいい
 
フレンチテックでは、キートップを自由に表示が切り替えられるもの。
文字だけでなくフォトショップのショートカットなども表示可能。
1つ1つのキートップ表示が変わるのではなく、下に敷いてある一枚の電子ペーパー全体の表示を変更している。
キートップの周りにある膜の上下を検知してキーが押されたかを認識しているようだ
 
スマート印鑑。アプリが明滅を繰り返すことで、通信できるもの。
スタンプ側にもアプリ側にもブロックチェーンを使って記録。
デジタル化の波に逆行しているかもしれないが、物理的な誰でもわかりやすいインターフェースが特徴
 
海中のカゴの中にカニやロブスターが何匹入ったかがわかる。カメラで確認可能
 
ペン回しを遊ぶためのアプリ。ばかばかしいものでも、磨いていけるのがフランスらしい
 
イスラエルの企業が、蚊の位置をレーザーでピンポイントに知らせる。殺傷能力はない
 
ローラーブレードにあと付けでモーター化するキット
 
ミュージックボックス。外装がダンボールなところがポイント。
ハードウェアを作るには金型が必要だが、金型のコストを払わずに安く提供できる
 
CESイノベーションアワード作品。吊るしパソコン。バカバカしいけど、空冷的にはいいのかもしれない
 
P&Gがトイレで紙がないときにやってきてくるロボット。
バカバカしいけど、テクノロジーに対してどれだけ積極的に取り組んでいるかがわかる

 最後にLOVOTのロボット。CESのイノベーションアワードにも取り上げられ注目を浴びたけど、「高くて誰が買うの?」「何に役立つの」など、いろいろ意見がありました。それはそれで正しいと思います。でも例えばディズニーがこれを買収したらまた話は変わってくるのではないでしょうか。

 話題になったからといって成功するわけではありません。しかし、ディズニーは以前Spheroを買収し、スター・ウォーズにBB-8として登場させ、おもちゃとして販売しています。成功するかしないかは紙一重。そういった実験場を目の当たりできるのがCESの良さでもあります。。

スタートアップ企業がCESへの出展で得られたもの

 続いて、PLANTIO, Inc.のCo-founder & CEO 芹澤孝悦氏が、2年連続でCESに出展した経験を踏まえて語った。

PLANTIO, Inc.のCo-founder & CEO 芹澤孝悦氏。
「プランター」という和製英語を発案・製品開発した芹澤次郎氏を祖父にもち、家業のセロン工業株式会社を経て、
現在は人と植物との関わり方を再定義する事業を展開

芹澤氏:PPLANTIOでは、世界では当たり前になっているビルの屋上を菜園地化しています。「grow」というサービスをやっており、アプリを通じて種をまき、育て、最後にみんなで食べるという循環型の社会を作っています。

 今回CESでは家庭用に「grow_connect」というセンサーをプランターの形にして、活用できる製品を展示。野菜栽培が増えると社会がどうなるのかソーシャルインパクトをビジュアライズ化し、Co2がどれぐらい減少するか。緑がどのくらい広がり、それによってヒートアイランド現象がどれだけ減少するか、といったことを伝えています。

 しかし、これは非常に伝わりにくいと思いました。そうした伝わりにくいものをどう展示すべきかといったノウハウをお話したいと思います。

2019年に出展したときの状況。プランターを作るということで、プランターを展示したが惨敗に近い結果だった
 

 2019年の出展時は、ほとんど足を止めてもらえませんでした。隣にはLOVOTのブースがあり、そちらのほうが大注目を浴びてしまったため、より足を止めてもらえませんでした。そこで今年はとにかく目立つことに力を入れました。また、情報を整理し1秒でわかるように工夫しています。

2020年のブース。畑とプランターで情報をコネクトすることで、
イベントができコミュニケーションを通じて野菜を育てるということを全面に出した
 

 こうした工夫によって、たくさんのお客さんに来てもらいました。また、メディア限定のイベントにも出席したところ、たくさん取材をしていただき、メディアにも露出されています。

 なぜ、米国では発売されていないわれわれが出展しているのかというと、たくさんの日本の大企業の方が来ています。そういった人たちとCESを通じて知り合うことで、事業連携を進めています。たとえば、大手デベロッパーさんとは屋上に畑を作ったり、ベランダにプランターを標準搭載したり、という話をしています。スマートシティーとしてわれわれのカルチャーを取り入れてもらうなど、そういった話に発展していくことがCESへの出展の目的なのです。

 ものすごくたくさんの企業が出展しています。そこで、何ができるのか。日本らしいキラリと光る技術を出すべきだと思っています。日本のスタートアップの傾向は、よく話を聞けばスゴイものだとわかる製品やサービスが多いと思います。それをどう伝えるかがキモなので、今後もチャレンジしていきたいと思っています。

CESは情報収集だけでなく協業・パートナー探しのきっかけ

 続いてディスカッションが行なわれた。

モデレーターは株式会社アドライトの代表取締役CEO 木村忠昭氏。
事業開発やオープンイノベーション、スタートアップ企業やイノベーターの育成を手掛けている。
YOXOBOXではアクセラレーションプログラムも展開している
 

━━今回CESの会場を見て回り、全体的に感じられたものはなんでしょう。

美谷:ソニーのコンセプトカーなどを見て、大企業もスタートアップ的になってきていて、良い点真似しあって良い変化が起きていると感じました。デルタ航空も同様ですね。アプリで荷物がどこにありますといったことがわかるようになっています。スタートアップだからすごいというだけでなく、良いところを吸収して切磋琢磨していると思います。

━━トヨタもビックニュースをCESに持ち込んでPRとして使われているなと感じました。芹澤さんはいかがでしょう。

芹澤:全体感としては昨年に比べて遥かに人とが来ていました。また、家電ショーなのですが、プロダクト単体ではなく、サービスが複合し、サービスを働かせるためのハードウェアが多かったですね。われわれと同様きちんと話を聞かないとわかりづらいプロダクトが多く、そのあたりは多様化してきたのではないかと感じました。

━━ガジェットよりはソリューションが増えてきたということでしょうか。今回大企業の印象はいかがでしたか?

美谷:TOTOとかは昨年のウォシュレットだけの展示から、面白いプロダクトの展示に変わっていました。出展する側に回らないとなかなか情報が得られず、協業の機会を得られない時代になったのかなと感じました。

━━日本企業の存在感はいかがでしたか?

芹澤:これまでは正直メディアで見ればいいというものが多かったのですが、今年は違ってきていて、最たる例がTOTOだと思います。奇をてらったというか技術やテクノロジーを使えば、こうしたマッシュアップやこういう提案ができるぞ、みたいなものを感じました。ただ、グローバルで見るとアグレッシブさ、まだ足りないと思います。もっとここでないと見られない、ワクワクするようなプロダクトにするといいと思います。

美谷:日本企業は個々に頑張って話題性も出していたと思います。ただ、それ以上に中国企業が勢いもあるし、数も多く、深センという名のつく企業だけ数えても420社もありました。日本的なきめ細かさ、可愛らしさも取り入れてきていて、日本企業も切磋琢磨していかないと、追い抜かれてしまうかもしれません。

━━出展することで事業効果はあるのでしょうか。

芹澤:われわれの場合は、それを狙っているので、事業連携ができるか声をかけていました。ソニーや日立、東芝など、多い会社では1000人規模とも聞き、かなり多くの人が来ているということがわかりました。スタートアップ側からすると、非常に投資効果が高いと思っています。

━━日本同士ではあるけど、CESに参加したほうが効果的ということなんですね。海外スタートアップで特に目立っていた国はどこでしたか?

美谷:フランスはもちろん、韓国が頑張っていました。昨年は50社程度だったのですが、今年は100社を超えていました。政府のバックアップもあり、お客さんがよく通る場所にソウル市のブースを出展していましたね。ラスベガスのバスに広告も出していました。また、深センの会社も政府の支援が入っていたようですね。

━━毎年日本のスタートアップが賞をとったりしていましたが、今年は日本のスタートアップで気になった企業は?

芹澤:昨年はLAVOTでしたが、今年は個人的にゲートボックスですね。ジャパニメーションというか、日本のデジタルコンテンツに対して海外の反響はどうなのか気になっていました。結果、反響もよく海外向けアバターではなく、日本向けのものを出したほうがいいのではと個人的に思いました。

美谷:スタートアップではない場所になりますが、Xenomaは昨年回路を織り込んだシャツなどを出展していましたが、今年は倒れると検出されるパジャマやスマートスーツを出展していました。また、ノーニューフォークスタジオが走る動作を解析するシューズを、アシックスの出資を受けたことで、アシックスの会場で発表していました。そういった成功例が見られたのは嬉しいですね。

━━テクノロジーで気になったものは。

芹澤:技術面ではそこまでイノベーションはなかったのではと思っています。大事なのはIoT、ICT化していった先に、解析してどんなことがわかったのか、それを使ってどう利用されているのか。その先がまだ見えていない気がしました。

美谷:ARやVR領域ではより高性能なものが出てきていましたが、われわれはそれを使ってどのようなビジネスができるのか、という観点で見させてもらっていました。先程紹介した、ダンボールで作ったデバイスは、今まで少量だと難しかったものも、それをうまく回避して勝負できる。ラズペリーパイを活用するなど既製品を使うことで、スモールに新しいイノベーションができるもの、真似できそうなところに注目していました。

━━ほかのカンファレンスと違う点は。

芹澤:CESに出ることで、日本の大企業も来るのでマッチングも可能ですが、来ているお客さんとたくさんコミュニケーションすることで、自分たちのプロダクトやサービスがグローバルにどこのカルチャーに刺さるのかが明確に見えます。米国でも⻄と東では違いますし、グローバリゼーションの中で、どういうポジショニングで戦略をとっていくのかが、一気に見られるのがいいと思います。

美谷:ボリュームがぜんぜん違います。参加者も大企業のイノベーションに関する展示も圧倒的に多いですね。技術だけでなく、価値を提案していかに共同作業できるのかを確認できる場としていいと思います。

━━最後にスタートアップ企業の人に対してひとこと。

美谷:2つの面で面白いと思います。もちろん自社の製品のアピールや協業探しの場ではありますが、出している人たちが非常に面白いです。自分たちが挑戦しようとしていることに対して、ライバルはどう取り組んでいるのか、もしかしたら協業できるパートナーが見つかる可能性もあります。情報収集だけでなく、パートナー探しとしても行ったほうがいいと思います。

芹澤:まずは出展してみることですね。自分で飛び込んでみて感じることはスゴイあると思います。自分自身を磨き、サービスをアップデートして、人に伝わるようになったので、出してみたいと少しでも思っているなら、出展すべきだと思います。

■関連サイト

 CES 2020

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