UPDATE: 2020/05/27

育児の負担や高卒就職などの課題に挑むスタートアップ企業たち

愛知県・大阪府・横浜市 3自治体合同Demoday イベントレポート<前編>

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 愛知県・大阪府・横浜市の合同による「3自治体合同DemoDay」が3月9日に開催された。本イベントは、愛知県「Aichi Open innovation Accelerator」、大阪府「スタートアップ・イニシャルプログラムOSAKA」、横浜市「YOXO Accelerator Program 2019」の3自治体によるアクセラレータープログラムに参加するスタートアップの成果発表を通じて、情報交換や交流を促進するもの。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オフラインの開催を中止し、オンライン(ライブ配信)による開催となった。ここでは、各スタートアップによるピッチを前後編の2回に分けてレポートする。

 今回のDemoDayには、愛知県「Aichi Open innovation Accelerator」に採択された7社のうち6社、大阪府「スタートアップ・イニシャルプログラムOSAKA」の採択企業10社のうち6社、横浜市「YOXO Accelerator Program 2019」の第1期に採択された12チームの計23組が登壇した(株式会社タイミーは愛知県・大阪府の両プログラムに採択)。

 ここでは、人材/教育分野、AI/IoT分野、食/化学/農業分野、ソリューション/サービス分野のスタートアップピッチをレポートする。

学生の悩みを解決するソリューションが登場

 人材/教育分野は、大阪府の株式会社アッテミーと、横浜市の株式会社137の2社。

高校生のインターンマッチングサイト「ATTEME」
大阪府/株式会社アッテミー

 「ATTEME」は、高校生向けの職場体験申込サイト。今の高卒就職の現状は、9割が学校からの斡旋で、ひとり1社しか応募できない。企業からの求人説明も基本的には進路担当教諭に対して行なわれ、高校生自身は仕事を選ぶことができないという。

 その点ATTEMEでは、ジョブツアーやインターンシップなどの職場体験の検索&申込みができ、気に入った会社があれば学校を介さずに直接、求人エントリーが可能だ。求人情報の掲載費用はサブスクリプション型で、コンテンツ数やコンサルの有無で3つのプランが用意されている。

学校の働き方と情報格差を解決する学校連絡・情報共有サービス「COCOO(コクー)」
横浜市/株式会社137

 株式会社137は、学校が抱える教職員の長時間労働、学校と保護者との連絡の非効率性・不確実性、不登校などの課題を解決するため、学校連絡・情報共有サービス「COCOO(コクー)」を開発した。内閣府の統計によると、小中学生をもつ家庭の15%はウェブにアクセスできるデバイスを持っていないそうだ。

 COCOOでは、学校からのお知らせをメール、一斉電話、ウェブサイトの3つの方法で配信する。また、24時間欠席連絡の自動受付/集計機能、カレンダーの共有などの機能を持つ。2019年4月より横浜市内の6校で試験導入・実装検証を実施。サービスは学校や自治体に提供し、保護者は無料で利用可能だ。


株式会社137 代表取締役社長 黒田 千佳氏

日常からビジネスシーンまで多岐に渡るAI技術

 続いてAI&IoT分野は、愛知県の「ふれAI」と株式会社マップフォー、横浜市のFutuRocket株式会社の3チームが登壇。

家族の思い出を声で残す「ふれAI(あい)レコーダー」
愛知県/ふれAI

 共働き家庭では、出産後は赤ちゃんの世話に追われて夫婦の会話が減りやすい。働きに出ている片親には育児の様子が十分に伝わらず、一方の親にばかり負担がかかってしまう。またワンオペの子育てでは、日常を記録する余裕がなく、貴重な思い出が残せない。

 そこで開発されたのが「ふれAIレコーダー」だ。本アプリは、日常の何気ない会話を自動で録音し、育児の日常を家族で共有できる。

 ふれAIレコーダーでは、子どもの声から喜怒哀楽をAIが判定し、その前後の音声を自動で録音することで、自然で決定的瞬間を記録できるのが特徴だ。録音した音声はスマホアプリに転送され、声のアルバムとして音声を聞くことができる。2020年中にクラウドファンディングで試作品をリリースし、2021年度からの量産を目指す。

高精度で安価な3次元地図作成システムを開発
愛知県/株式会社マップフォー

 現在の自動運転システムは、3次元地図を用いて自車位置を高精度に認識しているが、既存技術での3次元地図の作成費用は数億円規模と高コストだ。

 より安価に自動運転技術を実現するため、3次元地図・位置測定技術を開発する名古屋大学発のスタートアップである株式会社マップフォーは、独自の3次元地図作成アルゴリズム(SLAM)と、低価格なセンサーなどを用いた一推定アルゴリズム(GMSS/IMU)を組み合わせ、車両走行軌跡をリアルタイムで算出するシステムを開発した。従来の10分の1のコストで自動運転を可能にするという。さらに、この技術をプラットフォーム化し、MaaSや自動運転だけでなく、農林業、インフラ保守、防災などへの活用も目指している。

店舗・施設向けスマートAIカメラ「ManaCam」
横浜市/FutuRocket株式会社

 FutuRocket株式会社は、スモールビジネス向けのウェブカメラ「ManaCam」を開発した。画像認識で人数を自動でカウントするAIを搭載する。日、店舗の来店者数やイベントの来場者数を時間帯別にデータを集計し、混雑する時間帯やチラシ配布などの効果や、コロナ対策のために密でない状態を維持できているか、想定以上にレジ待ち行列や来店者がいないかの把握もできる。

 小型のウェブカメラタイプなので、個人経営の店舗や小さな施設でも自分で簡単に設置できるのがメリットだ。価格はカメラ本体が9980円、利用料は月額980円。現在はYOXO BOX内を始め、東京都内の複数施設でトライアルを実施している。今後は画像認識エンジンの精度を向上させ、2020年後半には、性別や年齢の判別機能を追加する予定だ。


FutuRocket株式会社 美谷 広海氏

一次産業から食卓、廃棄までを先端技術で課題を解決

 食・科学・農業分野は、横浜市の株式会社びるめし、大阪府のスパイスキューブ株式会社株式会社オリーブ技研の3社。

ボディビルダーの高たんぱく冷凍弁当「びるめし」
横浜市/株式会社びるめし

 "びるめし"とは「ボディビルダーのめし」の略称である。フィットネスの現場などでは、食事指導が日々成されているものの、調理の手間や味気なさから、指導通りの食事が実現できていないケースが大変多いという。

 そこで、栄養価が計算された食事をもっと手軽に美味しくとれるように、と開発されたのが管理栄養士監修の高たんぱく冷凍弁当「びるめし」だ。チンジャオロースやハンバーグ、カレーなど豊富なメニューで、レンジで温めるだけで食べられる。現在はECサイトでの通販およびゴールドジム40店舗、クリニック等で販売するほか、過去にはエステ会社によるOEM商品開発、横浜ベイスターズの2軍選手への提供などを行なっていた経歴もある。今後は、より専門性を高め、プロスポーツチームとの協業などによる販路開拓を進めていきたいとのこと。


株式会社びるめし代表取締役の今井 準氏は、ボディビルダーで管理栄養士の資格をもつ

植物工場の設計・栽培技術・人材派遣まで農業経営をフルサポート
大阪府/スパイスキューブ株式会社

 スパイスキューブは、植物工場に特化した運営農業ベンチャー。植物工場とは、LED照明と水で野菜を生産するIoT施設で、自然環境に左右されず、どんな地域・場所でも事業を運営できるのが特徴だ。理想的な農業の形としてメディアに注目されているが、実際には運営企業の6割が赤字という。その原因は、植物工場での生産方法や栽培技術、経営がブラックボックス化される傾向にあり、知見が蓄積されていないまま、企業の新規参入が繰り返されているからではないか、と推測される。

 そこでスパイスキューブでは、稼働している植物工場の視察ツアー、低コスト植物工場の設計請負、農業技術者の派遣といったサービスを提供。植物工場への企業の参入を増やすことで、農業の担い手不足の解消、食料自給率の向上を目指す。

残留塩素を無害化・抗酸化する水溶液を開発
大阪府/株式会社オリーブ技研

 株式会社オリーブ技研は、残留塩素を無害化し、抗酸化する抗酸化カルシウムイオン水溶液(商品名「マイニック-S」、特許取得済み)を開発・販売している。

 浪越養鶏場との実証実験では、ひなの飲み水にマイニック-Sを0.1%添加して育てたところ、鶏卵の栄養が低カロリー、高たんぱく、低脂質になるという結果が得られた。現在、ブランド卵「父母ヶ浜たまご」として販売されている。また、植物の液状複合肥料として「マイニック-FM」を開発し、ゴルフ場80コースへ販売。2020年4月からは、「農業屋」にて一般向け液肥として販売を開始。さらに、パウダー化した「マイニック-P/PA」、消毒用の強アルカリ性水溶液を開発し、協業に向けて特許申請の準備を進めている。

革新的なアイデアが集う新サービスたち

 ソリューション/サービス分野は、横浜市のMiθra(ミスラ)、SHOW- 匠 -CASE(ショーケース)、ハーチ株式会社株式会社DO THE SAMURAI、大阪府の株式会社toraruの5組が登壇した。

ブロックチェーン技術でチケットの不正転売問題を解決
横浜市/Miθra

 横浜国立大学の大学生起業グループMiθraは、ブロックチェーン技術を活用したチケット販売ソリューションを提案する。

 音楽ライブなどのチケットは不正転売が後を絶たず、イベント会社を通してプレイガイドから販売するため、購入プロセスが複雑で手数料も高い。Miθraのチームが開発する次世代チケットプラットフォーム「Mi Ticket」は、ブロックチェーン技術を用いて所有権を明記することで、アーティストが自分でeチケットを発行できるサービスだ。

 アーティストは、中間手数料が削減でき、購入者も無駄な手数料がなく、ひとつのアカウントでチケットを管理できるのがメリット。eチケットの価格は発行したアーティストしか変更できないため、不正な転売が防げる。ビジネスモデルは、アーティスト側のサービス利用料はチケット売り上げの2%、購入者側からは手数料として1チケット220円を想定している。


Mithra, Inc 工藤 大嗣氏

作業現場の安全管理をスマート化するアプリ「SHO-CASE」
横浜市/SHO-CASE(ショーケース)

 施設工事の現場では、事故を防ぐための安全確認を大量の書類で管理している。作業員は現場の入退場時に手書きで書類に記入せねばならず、残業の原因にもなっているという。また、とくに外国人労働者にとっては、手書きでの記入は大きな負担だ。

 SHO-CASE(ショーケース)の髙村勇介氏は、ディスプレイ業界での現場監督の経験から、施工現場の作業員情報や作業内容をクラウドで管理するアプリ「SHO-CASE」を開発した。作業員は現場に設置されたQRコードをアプリで読み取るだけで、入退場の時刻を記録でき、書類の記入から解放される。また遠隔地からも現場の状況が確認できるので、事故発生時にも迅速な対応が可能だ。


SHO-CASE 髙村 勇介氏

横浜市のサーキュラーエコノミーを推進するオンラインメディア「Circular Yokohama」
横浜市/ハーチ株式会社

 ウェブメディア事業を展開しているハーチ株式会社は、横浜市内のサーキュラーエコノミー(CE)推進メディア事業「Circular Yokohama」を紹介した。オンラインメディア「Circular Yokohama」を通じて、横浜市のCEプロジェクトを可視化し、イベントの開催、国内外の視察ツアープログラムや人材マッチングなどを展開し、横浜市の課題解決と新たな雇用を創出するのが事業の目的だ。

 消費者向けには、CEイベントやワークショップ、体験プログラムなどを開催、CE推進企業向けには、CE事業・商品開発の支援、CE製品の通販、店舗への送客機能を提供する予定。現在は、社会貢献活動を可視化するブロックチェーンアプリ「Actcoin」と連携し、横浜市のサーキュラーエコノミー活動に参加するとトークンがもらえる仕組みづくりを進めているそうだ。

御朱印巡りで地域を活性化! 神社寺院の検索サイト「ホトカミ」
横浜市/株式会社DO THE SAMURAI

 日本最大の寺社の検索サイト「ホトカミ」を運営する株式会社DO THE SAMURAIは、各地の御朱印めぐり企画を提案。「ホトカミ」には、全国14万5千件の寺社情報、お参りの記録7.5万件、画像38万枚を掲載し、最近の御朱印ブームを牽引してきた。御朱印集めは、5年間で7倍に増えているそうだ。

 横浜御嶽神社では、ホトカミを通じて情報発信したところ、数十年ぶりに黒字化し、周辺の飲食店も繁盛したという事例もある。御朱印めぐりのモデルコースを企画し、ホトカミで発信すれば、地域活性化、観光誘致として大きな効果が期待できそうだ。


株式会社DO THE SAMURAI 吉田 亮氏

体の移動しない新しい移動サービス「GENCHI」
大阪府/株式会社toraru

 「GENCHI」は、移動ができない人と現地の人をマッチングする遠隔作業代行サービス。例えば、特定店舗でしか販売されない限定商品の買い付け、寺社への参拝など、その場所に行かないとできないことを現地の人に代行してもらう仕組みで、ウェブサイトでマッチングし、ストリーミングで現地の人に遠隔指示を行なう、というもの。

 もともと同社はロボットを開発していており、遠隔ロボットの社会実装にはまだ技術、コストともに課題がある。そこでロボットやドローンに移行するまでのつなぎとしてシェアリングエコノミーによる解決策を考えたという。将来は世界中にサービス網を拡げ、ロボットやドローンとも連携した疑似移動サービスとして展開していきたいそうだ。

 後編では、物流、プラットフォームビジネス・シェアリングエコノミー、ヘルステックの3分野8社の成果発表をレポートする。

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