UPDATE: 2020/05/27

スタートアップ企業たちが挑む物流や医療現場の課題解決ソリューション

愛知県・大阪府・横浜市 3自治体合同Demoday イベントレポート<後編>

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 愛知県・大阪府・横浜市の合同による「3自治体合同DemoDay」が3月9日に開催された。本イベントは、愛知県「Aichi Open innovation Accelerator」、大阪府「スタートアップ・イニシャルプログラムOSAKA」、横浜市「YOXO Accelerator Program 2019」の3自治体によるアクセラレータープログラムに参加するスタートアップの成果発表を通じて、情報交換や交流を促進するもの。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オフラインの開催を中止し、オンライン(ライブ配信)による開催となった。ここでは、各スタートアップによるピッチを前後編の2回に分けてレポートする。

 後編の今回は、物流、プラットフォームビジネス・シェアリングエコノミー、ヘルステック分野のスタートアップ10社の成果発表をレポートする。

物流業界のサブスク、“空の権利”の貸借サービス

 物流分野の採択スタートアップは、横浜市のWillbox株式会社株式会社トルビズオンの2社。

国際物流をスマート化するプラットフォーム「Giho」
横浜市/Willbox株式会社

 Willbox株式会社は、2019年11月に創業の国際物流スタートアップだ。国際物流は専門性が高く、情報の非対称性が起こりやすい。また荷主と物流事業者の間のやり取りが不透明なため、お金、時間、安全対策が適正に行われているのかがわからない。

 そこで同社は、国際物流の荷主と物流事業者を直接結ぶプラットフォーム「Giho」を開発した。

 荷主は簡単な情報を入力するだけで物流事業者からの見積書を数十秒で取得でき、プランを選択して直接輸送を依頼できる。「梱包×データ」という相反する2つを組み合わせた、全く新しいプラットフォームだ。ビジネスモデルはサブスクリプション方式で、荷主が月額利用料を支払う。2020年5月よりベータ版の提供を開始する予定だ。


Willbox株式会社 神 一誠氏

地権者とドローンユーザーが空の権利を貸し借りする「sora:share」
横浜市/株式会社トルビズオン

 離島や山間部へのドローン物流が期待されているが、日本の民法では、他人の土地の上空では無許可に飛行できず、社会実装への壁となっている。

 「sora:share」は、地権者とドローンを飛ばしたい人が空中使用権を貸し借りできるサービスだ。これまで行われてきた多くのドローン物流の実証実験は、河川や離島などに飛行ルートが限定されているが、「sora:share」で地権者調整することで陸地上空の飛行が可能になる。

 また、万が一の落下事故に備えて、空域取引に関する保険を損保ジャパンと共同開発し、最大1億円まで補償可能となっている。これまで山口県下関市、茨城県つくば市にてドローン配送の実証実験を実施。さらに、西濃運輸や森林組合とも提携し、空を使ったサービスの拡大を目指している。


YOXOアクセラレータープログラムを通じて、横浜市内での実証実験を検討中

錦鯉の価格を算定するAIが登場

 プラットフォームビジネス、シェアリングエコノミー分野からは、大阪府の合同会社Antrep、愛知県の株式会社Acompany株式会社クラッソーネ、大阪府と愛知県の両自治体のプログラムに採択されている株式会社タイミーの4社が登壇した。

AIによる価値算定システムを活用した錦鯉の越境ECプラットフォーム「KoiFan(コイファン)」
大阪府/合同会社Antrep(現 新潟県/株式会社KaaP)

 合同会社Antrepは、AIによる価値算定システムを活用した錦鯉の越境ECプラットフォーム「KoiFan(コイファン)」を紹介。錦鯉は新潟県長岡市・小千谷市が発祥とされ、約130以上の品種が50以上の国・地域に輸出されるクールジャパン商品だ。しかし、錦鯉は購入方法や相場がわかりづらく、また販売業者は人手不足で海外への販路開拓ができない、といった課題を抱えている。

 同社は、錦鯉に特化したマーケットプレイス型の越境ECモール「KoiFan」を2020年2月にリリース。さらに、錦鯉の写真を投稿するとサイズや模様の入り方からAIが価格を自動で算出する価値算定システムを開中。今夏に試作版をリリース予定だ。

ブロックチェーン技術を用いた秘匿計算プラットフォーム「SeDi」
愛知県/株式会社Acompany

 株式会社Acompanyは、データセキュリティーの研究開発を行なう名古屋大学発スタートアップ。顧客情報の分析や企業間のデータを活用したい場面で問題になるのが、個人情報や機密情報の漏洩、不正利用への不安だ。同社はブロックチェーン技術を用いることで、公開したくないデータを秘匿したまま、生データと同じ精度での分析を実現するデータ活用システム「SeDi」を開発した。

 データを安全に共有・活用でき、製造業の需給予測、金融業の正確な与信システム、医療現場でのカルテ情報の分析などへの応用が期待される。

10社の口コミと最安値がわかる解体工事一括見積サービス「くらそうね」
愛知県/株式会社クラッソーネ

 地方では人口減少による過疎化から空き屋が増えており、全国で848万戸の空き家がある。処分が進まないのは、解体工事の見積もりに時間がかかることもひとつの原因だ。

 株式会社クラッソーネの開発した「くらそうね」は、解体工事専門の見積もりサービス。ウェブページから建物の情報を入力すると、約1分で解体費用の相場と解体工事業者の情報を表示し、最大10社の解体工事会社から最短1日で一括見積が可能だ。現在はベータ版を公開しており、2020年中に正式版をリリース予定。

空いた時間に働けてすぐにお金がもらえるバイトアプリ「タイミー」
株式会社タイミー

 「タイミー」は、「この時間なら働ける」人と「この時間だけ働いてほしい」店舗や企業をつなぐスキマバイトアプリだ。ユーザーは働きたい業種と日時を検索して申し込み、仕事が完了するとすぐに入金される仕組み。また店舗側は応募者のスキルやレビューを設定できるので、面接なしでもミスマッチが起こりにくく、マッチング率は90%と高い。

 掲載料金は無料で、契約成立後に日当の30%を手数料として支払う。2018年に首都圏でスタートし、現在は全国に展開中。登録店舗数は1万以上、登録ユーザーは100万人を突破している。

いま注目を集めるヘルステックへの技術活用

 ヘルステック分野は、愛知県のメンタルコンパス株式会社、横浜市のPossi 開発チームCROSS SYNCアットドウス株式会社の4社が登壇した。

心の柔軟性を鍛えて、仕事の生産性を上げるメンタルケアアプリ
愛知県/メンタルコンパス株式会社

 メンタルコンパス株式会社は、心の柔軟性を鍛えてストレスをコントロールすることで仕事の生産性を上げるトレーニングアプリを開発。個人向けの「メンタルコンパス」はLINEで精神科医のメンタルトレーニングが受けられるサービス。通院や予約が不要で、ちょっと気分が落ち込んだときなどに気軽に相談できる。

 企業向けの「エレファントコンパス」は、仕事の効率アップに特化したトレーニングプランを提供。あいおいニッセイ同和損害保険との提携による日本初の労災保険付帯しているのも安心だ。サービス利用料は1人あたり月額400円から。

歯磨きしている間だけ音楽が聴こえる子供向け仕上げ磨き専用歯ブラシ「Possi」(ポッシ)
横浜市/Possi 開発チーム(京セラ株式会社)

 「Possi」は、京セラ、ライオン、ソニーの共同開発で生まれた、音楽が聴こえる子どもの仕上げ磨き用歯ブラシだ。歯ブラシのヘッド部分に京セラの小型圧電セラミック素子が埋め込まれており、歯ブラシの振動による骨伝導で歯を磨いている間だけ音楽が聞こえる仕組み。流す音楽はスマホと接続して好きな曲が選べる。

 2019年7月にソニーが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」でクラウドファンディングを実施し2ヵ月で目標金額2000万円を達成。

 すでに約1300台を支援者にお届け済み。実際にPossiを使っていただいた支援者からの意見やイベント・モニター施策などでの反応などを参考に、今後、一般販売について検討する。


Possi 開発チーム(京セラ株式会社)稲垣智裕氏

医療現場での情報共有を効率する医療支援AIモバイルアプリ
横浜市/CROSS SYNC

 横浜市立大発スタートアップのCROSS SYNCは、医療現場の情報連携・情報共有不足の解決へ向けた医療支援AI&労務効率化モバイルアプリケーションプラットフォームを開発。現在の医療現場は今も紙ベースの情報管理が主流で、情報共有の不足が医療ミスの原因にもなっている。

 同社のプラットフォームには、AIとIoTによる患者の重症化予測、申し送りの自動作成、ベッドマップによる病床の有効利用などのシステムが盛り込まれており、医療従事者間の情報共有と効率化の促進が期待できる。国内医療での普及に向け、2020年には11施設の導入を目指しており、横浜市内の医療現場で試験導入を検討中だ。


株式会社CROSS SYNC代表 高木俊介氏

点滴したまま自由に動けるモバイル投薬・点滴デバイス「atDose」
横浜市/アットドウス株式会社

 アットドウスは、狙った場所に狙ったタイミングで正確に超微量の投薬ができるモバイル投薬・点滴デバイス「atDose」を開発した。投薬方法の約8割は口から飲む経口投与が用いられているが、飲んだ薬剤は代謝により血中濃度が減少するため、定期的に飲み続ける必要がある。また、肝臓に負担がかかり、副作用が大きい。点滴は血中濃度を適切に長時間維持できるという点で効果的な投薬方法だが、従来の点滴はベッドに長時間拘束されてしまうため不便だ。

 「atDose」は、極細の注射針と超微少液量で連続送液が可能なポンプを組み合わせることで点滴装置の小型軽量化を実現。高濃度の薬剤をポンプと一体にして持ち運ぶことを目指している。

 デバイスの長さ5センチ、重さは0.5gと小さく、患者の腕に貼り付けたまま移動ができる。今後、共同研究者と共に実証実験を開始する予定だ。


アットドウス株式会社 代表取締役 中村 秀剛氏

 前編では本イベントに登壇した企業のうち、人材/教育分野、AI/IoT分野、食/化学/農業分野、ソリューション/サービス分野のスタートアップピッチをレポートしている。本稿とあわせてチェックしてほしい。

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