UPDATE: 2020/10/13
「実来店こそ最高の価値」。それでもフードデリバリーで目指す未来
今、注目を集める横浜発のスタートアップの一つに、スカイファーム株式会社(以下、スカイファーム)がある。同社の代表取締役 木村拓也氏が登壇した、2020年4月のオンラインイベントには、全国から約280名もの参加申し込みが集まった。
イベント内で、木村氏は「コロナ禍でスカイファームのサービスへの問い合わせ数は30倍にもなった」と語った。なぜスカイファームはコロナ禍でも急成長を続けるのか。本レポートではイベントの内容を抜粋し、スカイファームのフードデリバリーサービスが選ばれる理由、同社が「地域のデリバリープラットフォーム」として提供する価値や目指す未来などについて、お伝えする。

スカイファーム株式会社
スカイファームは、横浜、東京、大阪の3拠点でフードデリバリープラットフォームのサービスを提供している企業。当サイトでも紹介しているYOXO BOX(よくぞボックス) OFFICEに入居。ミッションとして”GOOD TIME, GOOD PLACE.”を掲げ、テクノロジーの力を通して空間と時間をもっと快適にしていくことを目指している。デリバリーだけでなく、テイクアウト、テーブルオーダーシステム等も対応し、法人のニーズに特化した展開を行ってきた。
代表の木村氏は、大学卒業後にWEB動画コンテンツの会社を起業、その後外資系の会社で2年ほどWEBマーケティングの仕事をした後、楽天に4年半勤務。その後は父親の農業事業を手伝いながら八百屋でも働き、その後スカイファームを起業している。
HP:https://www.sky-farm.jp

HP には“GOOD TIME, GOOD PLACE”の言葉が大きく書かれている
ここからは、イベントの主催者であり、ナビゲーターを務めたPeatix Japan株式会社(以下、Peatix)の畑氏と木村氏のトークセッションの内容からを紹介する。
八百屋さんを経てスカイファーム起業へ。その時、横浜を創業の地に選んだ理由
—スカイファームはどのようにして創業されたんですか?
当時は父親が農業を始めて手伝ってほしいと言われたタイミングとも相まって、野菜のeコマースから始めました。都内の八百屋さんの仕事を半年くらい手伝って、「生産者の顔が見える野菜のデリバリー」に取り組みました。ただ、八百屋には来てくれる人もいたものの、何も買わずに帰ってしまうことが多かったんです。
ユーザーにヒアリングした所、「時間がなくて作れないから買わない」という声を聞き、その話をお店に来ていたシェフにもしたんです。そうしたら、「うちの料理を運んだら?」という一言があって、それをきっかけにフードデリバリーに方向性を変えました。
そこから渋谷、六本木、お台場、みなとみらいなどの飲食店の数を自分なりにマーケティングをして、競合が少なく、かつ就業者が多い横浜エリアに絞ってスタートしました。
―競合という話がありましたが、競合同士お互い食い合うようなことはないんですか?
フードデリバリーのマーケットは、コロナ禍の前からも急激に成長していた領域だったんです。どこのフードデリバリーも、今はお店からデリバリーの依頼が殺到していて、それの対応で一杯いっぱいという様子。一社一社の成長スピードよりも、マーケットの伸長ペースの方が早いんです。そこにコロナ禍の影響もあって、マーケット自体が急成長している。だから、会社同士食い合う感じではないですね。

オンラインイベントの様子
―横浜で創業したとのことでしたが、メリットデメリットでいうと、いかがでしたか。
まずデメリットとしては、リアルな情報が届きにくかったとは思います。当時は渋谷と六本木でデリバリーが盛り上がっていましたが、リアルな情報を直接的に手に入れることは難しかったですね。あとは、横浜だと投資家の方との接点も限られていると思います。
ただ、メリットとして、競合が少ない一方でマーケットサイズは東京と遜色ありません。他社の動きなどに一喜一憂することなく、淡々と落ち着いて進められたと思います。
目指すのは“地域活性”と“安心”を実現するプラットフォーム
―コロナの影響はプラスの面とマイナスな面、両方あったのではと思いますが、どうでしょうか。
マイナスの面は、売り上げの95%は法人のお客様だったので、そのニーズがなくなってしまったのはやはり大きなインパクトとしてありました。
ただ、プラスの面として、商業施設や地元の商店街の方からデリバリーをやりたいというお話を多くいただいたので、それは追い風になっています。数でいうと30倍くらいに問い合わせ件数も増えました。

―UberEatsや、他にも沢山のデリバリーサービスもある中で、お店側はどのようにサービスを選ぶのでしょうか。スカイファームはなぜ選ばれていると思いますか。
複数のデリバリーサービスを導入している店舗様もいらっしゃいますが、お店のブランドの方向性を考えて、「地元でやっているから」、という点でスカイファームを選んで下さる店舗様もいらっしゃいます。
僕たちは、個人事業主の方に配送してもらうのではなく、地元の人が地元のレストランの食事を、地元の方に運んでいます。地域間のコミュニケーションや経済活性に重きを置いて、「どこの誰だかわからない人が来て怖かった」というような体験を減らせるようなプラットフォームにしたいと思っています。
デリバリーでリレーションを構築し、店舗と相互送客ができるのは本質的な価値
―視聴者の方から、「デリバリーの本質的な価値とは」という質問が来ていますが、どうお考えですか。
まさに問い続けないといけないテーマですね。今は利便性で使う人が多いと思うんですけど、本質的な所まで掘り下げると、リレーションを構築する所、一言で言うと実来店させられる所にあると思っています。
殆どの人は、デリバリーは忙しい時や手が離せない時、両親が自宅にくる時などに使っています。でも、自分たちのために時間がちゃんと使えるときには、実際にお店に行く。そうして相互送客できるのが本質的な価値なのかな、と。
僕が言うのも変ですけど、レストランで食べるのが一番おいしいと思うんですよね。実来店は最高の体験としてあって。一方で、利便性があったり、仲間と食べやすかったり、足が不自由な方も助かったりと、デリバリーの良さもあります。
デリバリーと実来店、セットであり方を定義していけると、僕らとしてはやりたいことに近づけるのではと考えています。

木村氏は今後のスカイファームの事業展開として、デリバリーやテイクアウトなど、複数に分かれているシステムをマージしユーザビリティの向上やお店の魅力をより伝えられるWEBサイトへの更新などを目指す、と語った。また、過去の注文傾向の分析によるより健康的なオーダーのレコメンド機能など、これまで蓄積してきたデータをもとにした仕組みなども考えていきたい、という。
デリバリープラットフォームとしての本質的な価値を問い続け成長する、スカイファームの今後が注目される。
なお、当サイトではスカイファームで働くティオン晴子氏へのインタビュー記事も公開しており、より具体的なスカイファームの取り組みや、横浜に住みながら横浜で働くライフスタイルに焦点を当てて紹介している。そちらも是非併せて読んでいただきたい。
<関連情報>
ティオンさん記事リンク:https://yi.city.yokohama.lg.jp/article/98/
イベント動画リンク:https://youtu.be/H8YHgIl3jQc
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