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UPDATE: 2018/08/20

横浜は東京の対岸としても、市内の位置関係も、絶妙の距離にある

株式会社HUB Tokyo 取締役/合同会社w00rk代表 ポチエ 真悟さん
株式会社plan-A 代表取締役 相澤 毅さん

世界のイノベーション環境に詳しく、日本では「価値」でつながるコミュニティづくりに携わるポチエ真悟さんと、元不動産会社員として横浜のまちづくりに携わり、関内にコワーキングスペース設立を計画している相澤毅さんに、横浜や関内の可能性や期待を語ってもらいました。(文中敬称略)

■日本のイノベーション

◇「面=地域」を持ち上げるのが日本風
―ポチエさんは世界的なネットワークの中にいらっしゃいます。そこから見て日本との違いは何でしょう?
ポチエ 日本っていろいろな意味で独特で、起業家という文脈になるとどうしてもアメリカ目線になる。アメリカ、中でも西海岸はまた独特で、1人スーパースターを見つけて、持ち上げてというスーパースターモデルなんですね。日本をアメリカのようにしようという考えもありますが、そうではない日本風があるはず。われわれがよく言うのは、点ではなく面を持ち上げることです。ただ、面である地域そのものを持ち上げるにはどうしたらいいのか。模索中ですが、そのほうが金銭的にも安いし事業的にもリスクが低いだろうと。そういう意味で、われわれはイノベーションの「参加型」「民主化」という言葉を使っています。

■横浜の価値とは

―その中で、横浜・関内というところは、他と違ったところはありますか。
ポチエ 日本風のモデルでやるとしても、それをすんなり実行できる所とできない所があります。関内がなぜ面白いかというと、開国が早かったせいなのか、多様性というのを肌で感じているカルチャーがあるんだろうなと感じます。イノベーションを起こすときって、全く閉鎖的な所と全くオープンな所があるとして、その間に心地よいオープン度合いがあると思うんですよ。横浜はどちらかというと、オープン寄りなんだろうと個人的に思います。それは行政の方と話してもそうですし、地域のイノベーターの方にお会いしてもそうですね。
行政の方はイノベーションに対する考え方が進んでいると感じます。優秀でお金を持っている企業を集めてどうしようというより、市民参加型イノベーション。要は本来の意味のイノベーションについて真剣に考えている。

相澤 やはり行政職員の方々のオープンマインドというのか積極的な感じがすごくありますね。そこで自分としても民間として相乗効果で盛り上げていきたいという気持ちになります。職員と局横断の講座をやったりしても、一緒にやる人、手を挙げてと言うと、市役所内で手が挙がらないことがないです。それも局や部署に関係ない。
ただ、横浜市全域を見ると、街全体がものすごく大きいので、何かやろうとすると、1個1個はそれなりにインパクトがあるはずなのに、薄まってしまい、市内全域に普及させるのは難しい。もっとコンパクトに小さな爆発をポンポンとたくさん起こしていかないと、ムーブメントそのものが起こしにくい環境なのかな、と。みなさんが抱いておられる横浜のイメージは、関内やみなとみらいであって、その辺りが矛盾を感じるなというのもあります。

■東京の「対岸」というコンセプト

◇横浜の多様性からインスピレーション
―横浜市のイノベーターズ・コミュニティ構想は、新しいビジネスが次々に生まれるエコシステムを横浜の街に築きたいということですが。
ポチエ 横浜や関内には、他の街にはない魅力がすごくあると思います。スタートアップ、起業家目線で考えると、インスピレーションが常に欲しいわけで、それはもちろん人からも受けるんですけど、場所もあります。関内を歩いていても超レトロから最先端まで、例えば食や文化の多様性があり、インスピレーションを受けるんです。私たちがお手伝いをしている地方都市だと、そこが持っているもの…例えば自然からインスピレーションということもありますが、コスモポリタンで多様な街の雰囲気は今、いま東京にはなかなかないです。
―東京よりも横浜?
ポチエ 今、世界でイノベーションが盛んといわれている街が幾つかある中で、例えばニューヨーク。マンハッタンは家賃も高いし、起業家が暮らす街ではないといわれていて、対岸のブルックリンに面白い企業が集まってきています。もう一つ、サンフランシスコも高騰してしまって、元々の住民も住めないくらいになっているときに、対岸のオークランドに行くんです。流行の最先端を行くような、とんがっているアーティストやクリエーター、起業家が行く。そういう関係が東京との間に言えるのではないか。東京はもう住む街ではないと(笑)。起業家にとって、住みやすい環境で、まわりにいい面白い仲間がいて、家賃が安い街。巨大な街の対岸というコンセプトは重要になってくるんじゃないかな。メタファー的にも物理的にも。

■横浜の「距離感」が起業家を生む
◇みなとみらいと関内をつなげる
ポチエ なぜ横浜なのか、関内なのか。重要なのは要はつながりなんですけど、どんな街にも資源はあるんです。ただ、そこの距離とか、そこの存在すら分からないというのが、ほとんどの場合課題です。横浜がなぜ独特かというと、遊んで働ける街は今は東京ではない。東京は仕事に行く場所だし、横浜は遊んで暮らして友達もいて家族もいる街であると。そういう点で横浜はどんどん需要が上がると思っています。
起業しやすい国というのをランキングするときに何を見るかというと、起業家が仲間を集めやすいか、家賃が安いか、R&Dで大企業や国が投資している技術にどれだけアクセスできるか。つまり「距離」なんですね。起業家がそれらを取りに行きたいと思ったときの距離です。それが、横浜は近いのではないかと。東京は横のつながりがなくタコツボ化しているし、いろいろなものからすごく遠い。
距離ということでは、横浜のみなとみらいと関内をどうつなげるかを見ても、すごく近い。その意味でユニークな街だと思います。

相澤 今の話はまさに的を射ていますね。横浜市が推進している、みなとみらいへ大企業をダイナミックに集積させて、関内をベンチャーの集積ポイントにしようという話。いい距離感ですよね。その中間点に、2020年新市庁舎ができるわけで、そこで市が果たす役割は大きくなっているでしょうが、いろいろな意味ですごくいい効果を生むだろうなと思います。特徴が明らかに異なる街が絶妙な距離にあるというのは、すごくいいなと感じます。

■関内のまちづくりにチャンス

―ベンチャー集積地を目指す関内の可能性は。
相澤  新市庁舎への移転が2020年にあり、関内の民間のビルの空室が一時的に増えます。つまりベンチャーが入って来られるチャンスということになります。ただそのときまでに「関内って魅力的だよね」という下地をつくっておかなければなりません。賃料が安いというだけでなく、タネとなるような要素がポツポツとでもできていることが大事なんです。飲食店への影響も想像できますが、現市庁舎は駅前であり、横浜スタジアムもあり、また再開発が動き出しているところであり、悲観的な状態がそう長く続くわけはない。そのときにあそこに何か面白い人たちが集まっていたよね、という状態の所が少しずつ飛び火していく状況が生み出せていくと、関内は何かのタイミングで生まれ変わるのではないか、とその気配は感じています。

■関内でコワーキングスペース

◇ネットワークの中心としてのハブ機能を
―その関内で、相澤さんはコワーキングスペース設立を計画していらっしゃいます。
相澤 前職の会社がここ(横浜市中区尾上町)に本社を持っていて、隣の第一有楽ビルを2017年に購入したのですが、空室率が50%を超えていたんです。もともと自分自身が関内をどうやって盛り上げるのかということに強い関心を持っていたことと、この界わいで地域デベロッパーとして本社を構えているわれわれがやらないで誰がやるのということで。ただシェアオフィスなのかコワーキングなのか、あるいは違う言葉なのか。自分の中で一番大きいのは人と人のネットワークの中心としてのハブ機能です。そこでどういうイノベーションを生み出せるきっかけになるのか。そういう機能も持たせるべきという発想なので、表現が非常に難しいです。
というのは、行政も部分的に使用できる状況をつくりたいと思っていまして、横浜市庁舎が関内のど真ん中から馬車道に移りますが、関内のこの拠点にまだ横浜市さんがいるよ、という状況。また、みなとみらい側の研究施設の人たちも出入りできる状況もつくっておきたい。いろいろな人たちが集まる場であって、ハブ機能もある、と。みなとみらいと関内のハブでもあり、民間と行政とのハブでもあり、他のシェアオフィスやコワーキングを結びつけて連携できる拠点でもあってほしいと思っています。

ポチエ コワーキングは場所として捉えるよりも、機能なんですね。機能を持った何か。われわれが最近手掛けたプロジェクトで、その機能にどういう名前をつけるかというと、今一番しっくりきているのは長野県塩尻市の「シビック・イノベーション拠点」という呼び方です。誰もが入ってくることができ、まさに市民がイノベーションを起こすためとはっきり分かる名前ということで。コワーキングでもない、アクセラレーターでもない、シェアオフィスでもない、機能全てを持っているけれどもそれ以上のもの、市民のものだよってことで。

■コミュニティのあり方
―ポチエさんは、コワーキングスペースを「価値でつながるコミュニティ」と言い換えていらっしゃいます。
ポチエ われわれが6年前に創業したころは、メディアはコワーキングって何?っていうのを説明しなければならない時代で、ひどい例だとキッチン付きの集会所と紹介されたんです(笑)。そういう時代から始まったんです。今はありふれていますが、われわれは起業家が成長するための道具として使っているわけです。ほかにも起業家育成プログラムですとかコミュニティ機能ですとか、海外へのネットワーキングを提供する場所として使っています。今はコワーキングといってもピンキリなので、われわれとしては使わないほうがいいということで

◇人脈、知識、人と人のつながり
―価値でつながるコミュニティとは?
ポチエ 今までのイノベーションのモデルとは、先ほども話したように、優秀な起業家を見つけてお金を集めさせて―サンフランシスコモデルとわれわれは呼んでいますが―というのを日本に持ってこようという文脈が多かったと思うんです。そうではなく人脈や知識をどのくらい集められたか、その人のスキルによりますが、それらを集めやすい環境をつくってあげることがわれわれの仕事の一つではないか、と。つまりお金以外のもの、「価値」としか言いようがないです。それからネットワーク、要は人と人のつながりですが、人と人の間には価値がある、ということでこういう表現をしています。
―横浜のコミュニティに必要なものは。
ポチエ われわれがこれから横浜に関わるとすると、機能として、これだけの規模の街ですから複数必要なのかもという話はしています。ただわれわれがやるのかどうか、オープンでインパクトハブ横浜みたいなのがあるべきなのか。ただ東京から来た何かというよりも、横浜ブランドの横浜らしい何かがあるべき、というふうに考えています。われわれは逆に、今あるコミュニティと一緒に働きたいですね。
コミュニティの集まりって、方向性であったり、手段であったり、あるいは地域愛とかでもいいんですが、お互い使える共通言語があるということですね。それが地域の言葉でも技術の話でも。一方われわれのように組織が大きくなったりすると場所の問題が出てきます。さらにコミュニティとコミュニティが交わりたいとなれば、もう少し大きなコミュニティとなる仕組みをつくっていく必要も出てきますね。

■「場」の持つパワー

―最後に、相澤さんが昨年リノベーションを担当された、このリストグループ本社ビルのラウンジについて教えてください。
相澤 元大和銀行の金庫室だったところを含め、空っぽだった1階を最大90人は入るラウンジにしました。建物は60歳以上。場の持つ力はすごいと思いますよ。そのようにして、多様な価値を生み出しにくかった限りなくクローズだった状況を、この場をつくることによって、意図していなくても人が集まってくる。そこから新たなものが生み出していける。人のつながりも生まれる。それが、やはり場の持つパワーですね。
ポチエ 私たちも相談をよく受けるんですけど、場をつくってしまった人の悩みってたくさんあるんですよね。特に男子はモノをつくりたがる(笑い)。つくったんだけれども人が来ない、面白いことが起きないというリスクもあります。
相澤 あるあるですね(笑)。
ポチエ 場が持つ力はすごく重要で、誰のための場であるかとか、コミュニティが必要としている場であるとか。とはいえ、一番大事なのは箱ではない、車があってもドライバーのほうが大事。
相澤 やはり人ですね。場とのワンセット。素晴らしい機能を持った車に運転できない人が乗っても何もできないのと同じですね。

株式会社HUB Tokyo 取締役/合同会社w00rk代表 ポチエ 真悟さん

株式会社HUB Tokyo 取締役/合同会社w00rk代表 ポチエ 真悟さん

ポチエさん「われわれが考えるアントレプレナーは、起業家であるかどうかよりも、アントレプレナーシップを持っているかいないかのほうが重要です。精神も含まれているんですよ、心の持ち方というか」

株式会社plan-A 代表取締役 相澤 毅さん

株式会社plan-A 代表取締役 相澤 毅さん

 

 

 

 

 

 

 

相澤さん「ネットワークとは、それこそ精神性が大事で、その人の考えに共鳴して、この人とつながりを持っていたいと思う気持ちが生まれる。それがあって初めてまさに点が線になっていく感じですね」

【プロフィール】
株式会社HUB Tokyo 取締役/合同会社w00rk代表 ポチエ 真悟さん
イノベーション専門家・事業プロデューサー。HUB Tokyoが運営するコミュニティ、Impact HUB Tokyo共同設立者。Impact HUBは世界約100カ所で展開する世界最大規模のアントレプレナーのコミュニティネットワーク。英国インペリアル大学機械工学修士課程修了。ロンドンで金融機関に勤務後、スタートアップやそのエコシステムづくりに関わる。2012年来日。イノベーションの起爆剤としての空間、人、ネットワーク、システムの設計やシミュレーション、コンセプト作りを専門とする。イノベーションの過程は一部の企業や都市が独占するのではなく、全ての市民が関わることでより豊かになると考える「イノベーションの民主化」を掲げる。
参考:HUB Tokyo WEBサイト

株式会社plan-A 代表取締役 相澤 毅さん
クリエイティブプロデューサー・イノベーションブースター。大手生活用品ブランドに勤務後、博物館支配人、リノベーション会社を経てリスト株式会社へ。同社社長室クリエイティブプロデューサーとしてまちづくり事業の企画・プロデュースを多く手掛けたほか、海外プロジェクトの推進や産学連携、空き家活用の一環として集合住宅のリノベーションプロジェクトを展開。2018年5月に独立。住宅業界にとどまらず、自治体や異業界など多岐にわたってさまざまなプロジェクトを手掛けている。リストグループのアドバイザー。

 

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